便利な「無料AI翻訳」なぜ仕事で使うとヤバいのか リスクは入力した情報の二次利用だけではない

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無料サービスでまず注意したいのは、情報漏洩リスクだ。翻訳のために投入された文章が、AIの学習に二次利用されているという。

瀬川憲一氏の写真
瀬川 憲一(せがわ けんいち)/みらい翻訳 CRO 兼 翻訳DXチーフエバンジェリスト。ベネッセコーポレーションにてキャリアをスタート。経営企画、新規事業開発を経て退職した後、2社のSaaSスタートアップの執行役員を経て、2020年11月よりみらい翻訳にジョイン。セールス・マーケティング領域を統括する一方、AI自動翻訳の理解促進、社会実装を推進する翻訳DXチーフエバンジェリストも兼任。AI自動翻訳の利用実態調査・分析、企業の翻訳環境整備のためのアセスメント、それら活動から得られた知見をシェアするウェビナーヘの登壇等、広報活動も行う(写真:みらい翻訳提供)

「無料のAI翻訳サービスを提供する企業の多くが、ネット上にある情報を徹底的にクロール(収集)してAIに学習させる方法を採っていますが、それだけでは学習量が足りないので、翻訳の精度を上げるために皆さんが投入した文章を取り込んでいます。利用規約を読めばわかることですが、無料と引き換えにこちらの情報を企業に渡しているのです。今のところ、無料サービスの利用によって被害を被ったという事例は確認されていませんが、だからといってみだりに情報を入力してはいけません」

自分はたいした情報を扱っているわけではないからと気軽に無料サービスを使っている人も多いかもしれないが、実際には重要な情報を入力してしまっている場合がある。例えばメール文の翻訳は注意が必要だ。同社の2023年調査では、自社名や取引先名、オンライン会議のURLやパスワードなどを含めたままメールの内容を入力してしまっているケースが散見されたという。

「無料サービスを提供する企業が、取得した情報を故意に外部へ漏らすことは決してないでしょう。情報は貴重だからです。もっと言うと、企業の内部ではどのように情報が利用されているのかはわからないということ。サービス提供者は情報を見ようと思えば見ることができ、二次利用のリスクは排除できないのです。そのため、とくに製造業のように世界中が欲しがる機密情報を持っている企業や、そうした企業と取引のある企業は、無料AI翻訳サービスを利用するリスクは非常に高いと言えます」

83%が無料AI翻訳サービスを使っていた

また、二次利用のリスクのほか、AI翻訳では「湧き出し」という問題がある。投入した原文とは無関係の言葉が翻訳結果に表れてくる現象だ。「社内の情報が、誰かの翻訳結果として出てきてしまう可能性がある」と、瀬川氏は警鐘を鳴らす。

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