便利な「無料AI翻訳」なぜ仕事で使うとヤバいのか リスクは入力した情報の二次利用だけではない

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こうしたセキュリティリスクがあるにもかかわらず、無料サービスはよく利用されている。同社が従業員500名以上の製造業を対象に行った2023年調査によれば、業務でAI翻訳サービスを利用すると回答した155名のうち83%がデータの二次利用の恐れがある無料サービスを使っていたという。

業務で使うAI翻訳の種類を示すグラフ

また、調査対象者が所属する企業の58%が、データが二次利用される可能性があるウェブサービスの利用に関して注意喚起が行われているという結果も出ており、利用に制限があったとしても無料のAI翻訳サービスが多く利用されている状況が浮き彫りになった。

「利用に制限を設けても完全に制限できるわけではありません。個人のスマホからアクセスするなど抜け道はたくさんあります。完全に制限する方法は、セキュアなツールを全員に与えること。安全に使えるものが手元にあれば、わざわざリスクを犯しませんよね。一部の部署にセキュアなツールを渡したところで、効率化はされてもセキュリティリスクは軽減しませんので、組織全体として導入することが重要です」

では、セキュアなツールは、どのように選べばよいのだろうか。

大前提となるのは、有料サービスであること。有料の場合、「ほとんどの企業は情報を二次利用しない。この点は安心していい」と瀬川氏は話す。そのため、機密情報に気を遣いながら入力しなくて済むので生産性が上がるし、とくに専門性が求められる内容については、安全かつ高い精度で利用できるという。

「例えば、契約書などはインターネット上に雛型はあっても実物は見つからないので、AIも学習することができず精度が上がりません。当社の場合、法律事務所と協力体制を取って、固有名詞や特殊条項などには触れないなど一定のルールの下、法務の学習データを集めています。非常に手間がかかるので、お金をいただいているわけです。このようにしっかりとしたセキュリティ対策が取られているのが、有料サービスだと考えてください」

有料のAIサービスを導入した後も要注意

また、どんなサーバーを使い、どう運用しているかを確認することも重要だ。とくに、利用しているAI翻訳サービスが国外のサーバーを使っているケースや、一部の処理で別会社のシステムを利用している場合などがあり、単純に日本法人だからといって確認を怠ると、守秘義務違反につながるケースもあるという。

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