ワークマン「一般客もヘビロテの店」変身への難路 売り上げの伸びが鈍化、見えてきた新しい課題
Q:新業態の強化は業績にどう貢献している?
作業服市場の頭打ちを受け2018年から取り組んできた客層拡大の戦略が当たり、ワークマンの業績は順調に拡大しました。ただ直近は、売上高に当たる「営業総収入」の伸びが鈍化してきています。営業利益に至っては2022年をピークに減少に転じており、足踏みが続いています。
今年の2月には、前期(2024年3月期)業績予想の下方修正も行いました。暖冬の影響で売り上げの伸びが想定に届かなかったうえ、円安によって仕入れ価格が高騰してしまったことも痛手に。足元では値上げなどの対策も進めていますが、人件費や物流費の上昇は今後も続きそうです。
こういった外部環境要因がありつつ、とはいっても、ワークマンにとっていちばんの悩みの種は、オープンから1年、2年と時間の経った既存店の調子が振るわないことだと思われます。
新店としてオープンした直後が好調であればあるほど、翌年以降にその実績を超えていくのは難しくなります。店舗数が増えていくと、必然的により小さい商圏へも出店しなければならなくなり、店舗単位で採算を取る難易度はさらに上がります。
目新しさで訪れる顧客だけでなく、リピーターを増やすことが今後のカギとなりそうです。
Q:「何度も訪れたくなる店」目指すための策は?
リピーターを増やすという点には、ワークマンの経営陣も非常に力を入れています。大きい施策の1つが「肌着の拡充」です。
衣料品の中でも消耗品という側面が強く、購入頻度の高い肌着。今春投入したプライベートブランドのクール肌着は、「他社と性能が同等でも価格差があるため、販売は好調」とワークマンは説明しています。この肌着で、5年のうちに年間売上高500億円を稼ぐという目標を掲げています。
もう1つが、小ロット短納期生産の推進です。例えば、一般客向け業態の「ワークマンカラーズ」では、トレンド商品に短納期生産を導入しています。この生産方法なら、発注から1~2カ月で商品が店頭に並ぶといいます。発注の点数も、ワークマンでは通常数万単位で発注することが多いのですが、最小で500点に絞れます。
好評だった短納期商品は「ワークマン女子」など別の一般客向け業態に横展開していく見込みです。一般向けの業態ではとくに、お店を訪れるたびに新たなトレンド商品が並んでいるようにすることが重要です。ここを強化し、来店頻度の向上を狙います。
ただ、お客さんを定着させることはそんなに簡単ではないでしょう。機能性肌着では、「エアリズム」や「ヒートテック」のユニクロを想起する人が多いと思いますし、小ロット短納期生産に関しても、新興EC勢のようにもともと得意としているライバルは多く存在します。
新業態の仕掛人であるワークマンの土屋哲雄専務は、「値段ではユニクロやGU、しまむら、無印良品に勝ちたい。それに加えてワークマンの衣料品はとにかく機能を付けていく」と話しています。
例えば女性服は、デザイン性を高めていくとモノを入れるポケットがなくなる、というように、デザインと機能性がトレードオフになる場合が少なくありません。ワークマンは仮にデザイン性が弱くても、圧倒的に機能面を重視して商品開発を進めるということですが、果たしてその戦略が当たるのか、注目です。
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https://toyokeizai.net/list/author/山﨑 理子
※動画内のデータや肩書は収録時点(2024年8月)のものです。
動画内写真:尾形文繁
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