オムロン、製造業での教育ビジネスで先駆者に 生産技術の高度化や経済安全保障で追い風

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米中対立に伴う製造拠点の多角化や人手不足による生産ライン自動化などで、製造現場の従業員教育ニーズが高まっている。そこにオムロンが挑戦している。

工場労働者の教育
世界で製造業に従事する人材へのニーズは高まるが、工場で働く技能をもつ人は不足している。オムロンは教育に目をつけた(写真:オムロン提供)

オムロンが製造現場の従業員教育や人材育成を支援・提供するサービスを立ち上げて、強化している。すでに世界で800もの教育コースを用意し、年間21万人の受講実績を重ねる。

事業の本格展開から日も浅いことから売上規模はまだ大きくないこともあるが、昨年度の売り上げは前年度比8倍程度の伸び。今年度も3倍以上に伸びると見据える。

世界で広がる製造現場の教育ニーズ

一般消費者には血圧計などの医療機器メーカーとして広く知られるオムロンだが、売上高のほぼ半分を占めるのは工場の自動化や生産システムを扱う制御機器事業だ。FA(ファクトリーオートメーション)と呼ばれる分野で、オムロンは同分野で世界大手の一角を占める。

オムロンは2年前に工場の管理やデータ活用のサービスを進める事業本部内に教育ビジネス部を設置。「IA(インダストリアル・オートメーション)アカデミー」という名称でFA機器の顧客である製造業各社向けに、現場従業員の教育や研修を請け負うサービスを本格化させた。

もともとオムロンは自社の機器・システムの販売・納入時などに、その製品の使い方や現場実装のやり方を技術支援サービスとして教えている。ただ、教育ビジネス部が手掛けているのは自社製品に付帯した従来の支援サービスではない。工場労働の経験や基礎知識がない人たちのほか、自動化による生産技術の高度化でスキルアップを求める従業員への教育サービスを請け負っている。

背景には世界各国の製造業をとりまく深刻な悩みがある。日本国内では人手不足による人材難で生産の自動化が進められているが、生産技術の高度化で新たなスキルが必要とされることが増えている。その上、熟練労働者の定年退職も進んでしまい、技術伝承が難しくなっている。

また海外では米中対立などの地政学リスクに対応するため、サプライチェーンシフトで製造拠点の分散化が進んでいる。新たな進出先ではこれまで農業に従事するなど、製造業に携わってきたことがない人材を雇用することも多く、そうした人たちには一から工場労働について教える必要がある。しかし、新興国の現地では熟練の工場労働者の絶対数が不足しているため、適切な教育を担える人材も多くない。

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