オムロン、製造業での教育ビジネスで先駆者に 生産技術の高度化や経済安全保障で追い風
オムロンで教育事業を担当するアドバンスドソリューション事業本部教育ビジネス部の朝岡あゆみ部長は「新しい生産拠点の立ち上げ時、最初は本国から駐在員を派遣して指導するものの、その駐在員の引き上げ後にどう体系的な教育を継続するかについての相談もある」と話す。
リソースが十分でない製造各社
これまで自社内で研修や教育をしてきた大手製造業各社でも、教育にリソースを割く余裕はそこまで大きくないのが実態である。新人の育成に携わるのは現場でも主力の中堅社員だが、教材の作成や実際の指導に時間をかけてしまうと本来の業務に支障を来してしまう。また指導のプロというわけでもないので、適切な教材作成や指導ができるとも限らない。
実際、ある大手電機メーカーでは当初社内で教育を行おうとしたがうまくいかず、「即戦力の人材を育成してほしい」とオムロンに声をかけたという。またグローバル企業では、新たな製造拠点の進出先の言語に合わせた指導が難しいなどの本国との違いに悩む事例もある。そこでオムロンが各地の拠点のスタッフを動員して教育サービスを提供することもできる。
さらに業界や国によって採用した人材のスキルにギャップがあることも教育ニーズの高まりにつながっている。教育ビジネス部経営基幹職の伊藤野里子氏は「自動車業界はエンジニアに人気の業界なので製造業が求める人材も集まりやすい。ところが、食品や日用品の業界では、そもそも『生産って何?』『制御とはどんな意味?』というところから教えなければならないこともある」と現場の状況を説明する。
そのほかIT分野が強いインドでは、高等教育を受けてきた学生もソフトウェアに強いものの、ハードウェアに弱いなど製造業が求める人材スキルと教育カリキュラムが必ずしもマッチしていない。そこでオムロンは企業だけでなく、インドの教育機関とも連携し、大学にロボットのラボを導入するなど支援を強化し、教育ビジネスの裾野を広げつつある。
朝岡氏は「従来の製品ごとに使い方を教える技術支援では、特定の機器が使いこなせるようになっても、生産技術の原理原則まではわからないため応用が利かない」と指摘する。体系的に学ぶことで従業員のスキルアップにつながるほか、生産性改善に向かって工夫するなど現場の自律化にもつながるという。
機器の使い方だけではなく、自動化推進に向けたプロジェクトマネジメントの手法などを顧客の要望に応じてカスタマイズすることができるといい、新人教育だけでなく、顧客の会社が求めるエンジニアのキャリアアップへの要望にも対応する。
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