貿易決済が混迷!「暗号資産」に手を出すプーチン 輸入が停滞するロシアの弥縫策に勝算はあるか

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繰り返しとなるが、暗号資産は民間の通貨であり、法定通貨ではない。そもそも送金ツールとして開発された暗号資産は、マイニングやステーキング(資産運用方法の一種)による不確かな信用に基づくため、相場が不安定だ。言い換えれば、そうした不安定なツールに依存しなければ、今のロシアは貿易決済ができないほど、国としての信用力は地に落ちていることになる。

暗号資産にすがりつくロシアの矛盾

だからといって、アメリカドルとの間で価値が固定されるステーブルコインを利用するということは、ロシアはアメリカドルの信用力を間接的に利用しているわけで、アメリカドル依存からの脱却と逆行する。そもそもとして、ルーブルという通貨に、そしてそれを発行するロシアという国自体に信用力があるなら、本質的にこうした貿易決済の問題は生じない。

結局のところ、ロシアの対応は日和見主義に基づくものにすぎない。もちろん、まずは貿易の目詰まりを解消する必要があるから、使えるものは何でも使わなければならない。その意味で、ステーブルコインに代表される暗号資産を用いて貿易相手国との決済を進めようというロシアの選択は、短期的には一定の合理性を有している。

しかしそうしたスタンスでは、開拓した決済ルートが何らかの理由で遮断されれば、また貿易が目詰まりを起こすことになるため、問題の抜本的な解決にはならない。アメリカドルの利用が制限される中で、ロシアは危ういギャンブルに手を染めているような印象を受ける。そして、その勝算は低いといわざるをえないのではないだろうか。

土田 陽介 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部副主任研究員

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つちだ ようすけ / Yosuke Tsuchida

2005年一橋大経卒、06年同修士課程修了。13年同博士課程単位取得退学。株式会社浜銀総合研究所を経て現職。 欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行う。主要経済誌への寄稿、学会誌への査読付き論文多数。著書は『ドル化とは何か‐日本で米ドルが使われる日』(ちくま新書)『図説ヨーロッパの証券市場(2020年版)』(分担執筆、日本証券経済研究所)『脱炭素・脱ロシア時代のEV戦略 EU・中欧・ロシアの現場から』(分担執筆、文眞堂)。 関東学院大学経済学部非常勤講師。

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