貿易決済が混迷!「暗号資産」に手を出すプーチン 輸入が停滞するロシアの弥縫策に勝算はあるか

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アメリカ国内では、ロシアが暗号資産を用いて貿易決済を継続していることに対し、超党派で懸念の声が上がっている。例えば民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員と共和党のロジャー・マーシャル上院議員は、4月29日の時点でジャネット・イエレン財務長官やロイド・オースティン国防長官ら政府高官に書簡を送り、具体的な対応を迫っている。

これに先立つ4月19日、アメリカ上院では超党派の議員によってステーブルコイン法案が発議され、2025年にも可決する見込みである。ステーブルコインを含む暗号資産全般の取引に関しては、各国で規制がまちまちであるため、規制のアービトラージ(事業者がより規制が緩い国に移転すること)が生じるといった問題が長らく指摘されてきた。

アメリカも欧州と同等の暗号資産規制に向かう?

ゆえにアメリカのステーブルコイン法では、2024年6月から順次適用されている欧州連合(EU)の暗号資産市場規制(MiCA)と同等の規制が設けられるだろう。例えばこのMiCAは、ステーブルコインの発行企業に最低でも準備金の60%をEUの銀行に預託することを義務付けるが、アービトラージを防ぐならアメリカも同様の規制を設ける必要がある。

暗号資産はあくまで民間の通貨であり、アメリカの法定通貨ではない。そのため、アメリカとて第三国間での暗号資産の利用を規制はできない。そこでアメリカは、まず国内でロシアの事業者との暗号資産の取引に関する規制を強化するとともに、欧日の政府にも同様の規制を設けさせることで、ロシアによる暗号資産の取引に制約をかけることになると予想される。

つまり近年、アメリカが多用する規制の「域外適用」というスキームを通じて、ロシアの暗号資産取引に制約をかけるのではないだろうか。より具体的には、ロシアの業者とステーブルコインを含む暗号資産で決済をした形跡がある業者を、アメリカ欧日の主要市場から締め出すことで、ロシアによる暗号資産の取引に制限をかけるといったイメージである。

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