新型セダンはフォルクスワーゲンを救うか ベンツの急伸で16年ぶりにシェア逆転?
一方のゴルフ・オールトラックは、ゴルフシリーズでは初となる、本格的なクロスオーバー4WD(四輪駆動)。アウトドアに出かける家族連れなどアクティブな生活を送る人や、東北地方などの雪国で日常的に運転する人を顧客に想定している。
新型パサートシリーズは、プレオーダーが始まった6月以降の受注台数が約1500台に到達。歴代シリーズの中では「最高の出足」(VWJ)だという。だが、今回のパサートに託されたミッションは、“シェア奪回の起爆剤”という単純なものだけではない。
日本でVWといえば、ゴルフや「ポロ」をはじめとしたハッチバックタイプが代名詞となっている。輸入車の中では比較的手頃な価格設定で、国産車からの乗り換え層を主なターゲットとしてきた。
ところが、今回投入したパサートの販売価格は329万円から。つまり、ゴルフより若干高めの価格帯、自動車のヒエラルキーとしてはアッパーミドルクラスの強化に乗り出したことを意味している。
買い替え客をつなぎ留められるか
背景にあるのは、買い替え客を取り逃しているという現状だ。
これまでVWは、得意のハッチバッグによって輸入車の購買層の裾野を広げることで成長を遂げてきた。だが、せっかくゴルフやポロで輸入車の魅力に目覚めてくれた顧客も、2台目はベンツの「Cクラス」やBMWの「3シリーズ」、アウディ「A4」といった上位車種に奪われていた。
「VWユーザーのうち、4割は次の車に買い替える際もVWを選んでくれるが、6割は別の輸入車ブランドへ移ってしまう」(VWJ)。新型パサートには、ハッチバックを卒業したユーザーの受け皿としての役割も期待されているわけだ。
もう1つ、VWJの背中を押したのが、上位車種ブランドの“侵食”に対する危機感である。かつてメルセデス・ベンツやBMW、アウディはVWと異なる客層をターゲットとしてきたが、ここ数年は小型化や低価格車種の拡充を推し進めるようになった。
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