「8月以降のハリケーン米国襲来」に注意が必要だ 原油先物や株式相場は乱高下する可能性が大
原油先物市場では、毎週水曜に発表される同国のエネルギー省情報局(EIA)の週間在庫統計が注目されている。在庫の大幅な変動(積み増しや取り崩し)の場合にはそれに反応して相場が大きく動くことも多い。通常なら300万バレル以上の変動があれば市場にサプライズと受け止められることが多いため、もし1000万バレルを超えるような取り崩しとなれば、買い意欲(先物相場の上昇)もかなりのものになると見ておいたほうがよい。
一方、ハリケーンの影響は、相場にとっては強気一辺倒の要因だけではないことに注意が必要だ。確かに、ハリケーンがメキシコ湾を進行している間は生産の停止だけを気にしていればよい。だが、いったん上陸すると、ほかにもさまざまな影響が予想されるからだ。
基本は「ハリケーン上陸で価格下落」だが個別に対応
中でもいちばん影響が大きいのは、需要の低下だ。これは主に、暴風雨に曝される付近一帯で、大規模な停電が発生することによる。化石燃料を大量に消費する火力発電所の需要が大幅に減少することに加え、停電で製油所の稼働も停止するなら、その分、原油の消費も減少することになる。また、LNG生産施設も稼働停止により、天然ガスの需要が落ち込む懸念も浮上する。
一方で、供給不安をさらに煽るようなシナリオも、もちろんある。付近にある、主要な原油の輸入港が閉鎖されることに伴って、原油の供給が極端に減る懸念があるほか、停電によるパイプラインの稼働が停止することで、アメリカの他の地域への石油や石油製品の供給が止まってしまうことも考えられよう。
これを原油先物相場にひきなおすと、通常、ハリケーンがメキシコ湾を通過している間は生産停止などの供給不安を手掛かりに相場が上昇。いったん上陸してしまえば生産施設の稼働が再開、生産が急速に回復する一方、前述の需要減少が嫌気される形で、大きく売りに押し戻されるというパターンがイメージされることが多い。
ということは、「まずは買いを仕掛けておいてハリケーンの接近に備える。そして、上陸したとみれば一気に売りに転じる」という取引戦略は、そうした事情に詳しいトレーダーなら、誰でも思いつきそうなものだ。
ただし、実際はそう簡単ではない。ハリケーンの規模が大きく、生産施設への被害が甚大なものとなり、稼働再開が大幅に遅れるような事態になれば話も別だ。その場合には当然のことながら、供給不安がいつまでも残る中で、一段と買いを呼び込むことも十分にありうる。
上述のように、ハリケーンの最盛期は、通常8月後半から9月半ばにかけてであり、現在はまだ初期段階だ。だが、予測はあくまでも予測にすぎず、この先実際にハリケーンの活動がどの程度活発になるのかはまさに「神のみぞ知る」だ。
だが、事前にしっかりと準備をしておくのと、まったくしないのではハリケーンによって相場が動き始めた際の対応に差が出るのは火を見るより明らかだ。もしマーケットが混乱状態に陥っても慌てることのないよう、複数のシナリオを想定して、しっかりと対応策を考えておきたい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら