「日銀利上げ」の確率を過小評価すべきではない 「高圧経済」完全脱却を市場に納得させられるか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

概念は明快だが、自然利子率は客観的に観察できないので推計するしかない。自然利子率は中長期でならせば経済の実力を示す潜在成長率に近似するはずであるが、短期的には景気循環などの影響を受ける。推計方法もさまざまある。しかも手法によって推計結果に幅がある。ある手法による推計値を基にすれば緩和的だが、別の推計値では引き締め的ということも起こりうる。

こうした限界はあるものの、近年のスタンダードとなっている推計法として、元FRB金融政策局長の故トーマス・ローバック氏と現ニューヨーク連銀総裁のジョン・ウイリアムス氏らが開発したHLWモデルがある。今年7月のECBフォーラムでウイリアムス総裁自身がアメリカとユーロ圏の自然利子率の推計を報告している。

アメリカに関しては意外な推計結果が出る

その結果をみると、①自然利子率(青色)は米欧とも低下傾向(=潜在成長率の低下)、②コロナ禍前の自然利子率と実際の実質金利(黄色)との関係は、ユーロ圏でははっきりと実質金利が自然利子率を下回り緩和的であったのに対し、アメリカではおおむね両者が同じ動きをしており意外にも金融政策は中立的であったことを示唆、③足元ではアメリカ・欧州とも実質金利が自然利子率を上回り引き締め的である、といった点が読み取れる。

特に、②は、2016年にイエレン議長が高圧経済に言及したアメリカが必ずしも高圧経済戦略を採っていなかったことを意味して興味深い。マイナス金利政策を採用したユーロ圏と採用しなかったアメリカの差ということかもしれない。

次ページ日本の自然利子率はどうなっているか
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事