日本のソブリンリスク 国債デフォルトリスクと投資戦略 土屋剛俊、森田長太郎著 ~最大の破綻リスクは社会保障政策にあり

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デフレは実質的な債務負担を増加させ、財政にマイナスの影響をもたらすことになると言われるが、著者はこの点についても興味深いもうひとつの見方を示している。デフレのもとでは預金という形で資金を保有することの機会費用が低下するため、家計や企業が資金を流動性預金として銀行に「とりあえず置いておく」ことが常態化し、このことが企業の資金需要の低迷(銀行貸出の伸び悩み)と相まって、財政赤字の円滑なファイナンス(国債発行)を支えてきたと、著者は言う。

本書で示されているのは日本の財政の脆弱性というよりは破綻の起こりにくさであるが、もちろん著者はこの構造が未来永劫続いていくと考えているわけではない。「デフレ脱却が日本の財政破綻リスクを高める」という著者の見解には異論があるが、高齢化に伴う社会保障費の増大について適切な政策対応がなされていないことが「日本ソブリンにおける最大のリスク」であるというのは、その通りだと思う。

日本のソブリンリスクの今後を規定する最大の要因は、新政権のもとでの政治的な合意形成能力の水準ということになるのかもしれない。

つちや・たけとし
バークレイズ・キャピタル証券ディレクター。1985年一橋大学経済学部を卒業。石川島播磨重工業、野村証券、チェース・マンハッタン銀行を経る。

もりた・ちょうたろう
バークレイズ・キャピタル証券ディレクター。1988年慶応義塾大学経済学部卒業。日興証券、日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券を経る。

東洋経済新報社 2940円 230ページ

  

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