娘が社長で両親は社員、会社を軸に描く家族の形 『29歳、今日から私が家長です。』書評

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『29歳、今日から私が家長です。』イ・スラ 著
29歳、今日から私が家長です。(イ・スラ 著/清水知佐子 訳/CCCメディアハウス/1870円/312ページ)
[著者プロフィル]李 瑟娥/有料メールマガジン「日刊イ・スラ」の発行人。ヘオム出版社代表。1992年生まれ。大学在学中からヌードモデル、文章教室の講師として働き、雑誌ライターなどを経て2013年に短編小説「商人たち」で作家デビュー。『日刊イ・スラ』などの著書がある。

イ・スラは1992年、韓国・ソウル生まれの作家だ。学資ローン返済のため、2018年に有料メールマガジン「日刊イ・スラ」を始めた。SNSで購読者を募り、月額1万ウォン(約1000円)で毎日1編書き下ろしの随筆を配信する。書籍化に際しては自ら出版社を興し、今や5万部超のベストセラーというから、日本でいうネット作家兼ひとり出版社だ。『日刊イ・スラ 私たちのあいだの話』(朝日出版社、21年)には、連載から精選した41編が訳出されている。

家女長(女=むすめ)制を採用

本書は彼女にとって初の「小説」である。鉤(かぎ)括弧をつけたのはフィクションと断定しがたい側面を持つからだ。主人公「スラ」は29歳の作家で自著の版元「昼寝出版社」の社長でもある。社員は2名、実の両親の「ウンイ」と「ボキ」。こう書けば『日刊イ・スラ』の読者は、元文学青年の父ウンイと、料理上手の母ボキを思い出すだろう。

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