なぜGMは「燃費の悪いクルマ」にご執心なのか 利益の過半を稼ぐアーリントン工場を刷新へ
2008年から2009年にアメリカでガソリン代が急激に上がり、SUVの需要が急減。ライバルメーカーがこの分野から身を引いてしまったため、現在ゼネラル・モーターズはアメリカの大型SUV市場でのシェアを64%まで引き上げている。
現在ガソリンの価格は下がっており、消費者はまたエスカレードやサバーバンのような大型車に食いつくようになっている。ゼネラルモーターズはアーリントンで評価3以上のハイエンドモデルのSUV1台につき1万ドルの利益がある、とアナリストが数字を挙げている。つまりSUVは儲かる自動車なのだ。
大型SUVはキャッシュマシン
「エスカレードは、まさにキャッシュマシンです」と、オートフォーキャスト・ソリューションズのサム・フィオラニ副代表が大型SUVキャデラックのことを話す。「1日に20台しか作らないが、1台8万3000ドルのこのクルマに人々が列をなしてお金を持って来るのです」
ゼネラル・モーターズは工場やモデルラインでの利益を開示していない。
中国の自動車市場が落ち込んでから、今後も大型SUVとピックアップトラックの利益を維持することは、バーラCEOのゼネラル・モーターズの株価を引き上げる戦略にとって非常に重要になってくる。今年の第1四半期で、中国での販売マージンは、昨年前半の総収入の11.2%から9.9%までに落ち込んだ。
バーラCEOは投資家たちに、今年はゼネラル・モーターズは株主に対して投資の20%の見返りを生み出し、資金の流れを安定させることを約束した。現在、ゼネラル・モーターズの株価は33ドルを下回っている。
同社は北米での営業利益率を10%以上に上げることを投資家たちに証明するため、プレッシャーの中にある。ゼネラル・モーターズの世界での営業利益率は第1四半期で5.8%だった。一方、北米の利益率は8.8%だった。
その高い収益性にもかかわらず、ゼネラル・モーターズが大型SUVを製造しているのはアーリントン工場だけだ。金融危機の前には北米にジェーンズビル、ウィスコンシン、メキシコと3つのSUV工場を持っていた。
7月14日の発表では、投資の多くは新工場の設備導入と、現在の製造ラインに併設する新しい塗装施設に使われる。ゼネラル・モーターズは工場の生産能力を大きく上げようとしていない、と考えられる。
業者からの情報によれば、ゼネラル・モーターズは2019年までに、次世代大型SUVを発売することを決めたようだ。より多くのアルミニウムを使って軽量化を図り、燃費を向上させ、より厳しくなった政府の燃費要件を満たし、今後ガソリン代が上がった際のリスクも軽減するという。
リサーチ企業のLMCは、燃費を向上させる政府の指示によって、大型SUVの価格は上昇し販売も衰えるが、車1台ごとの利益は高いまま維持できると分析している。