元メルカリ幹部がタクシー業界に乗り込んだ事情 日本版ライドシェア普及へ台風の目になれるか
――一方、宮崎CBOはサイバーエージェントの元取締役です。newmoにジョインした経緯と役割を教えてください。
宮崎聡CBO(以下、宮崎) 青柳とは、ともに北米に赴任していた2011年からの仲で、その後も連絡を取り合う関係だった。
そんな中、去年の夏に北海道を長期旅行した際、現地でバスの減便や移動困難者に関するニュースを頻繁に見かけた。実際、お酒を飲みに行った帰りには、本当にタクシーがつかまらない。東京にいたら気付かないが、これは何かが成り立たなくなっていると痛感し、「青柳さんならどうするかな……」と考えていたら、彼のほうから連絡が来た。
久しぶりに食事をして、「実は、M&Aなどを通してタクシー会社の経営に参画していく側面で困っている」と。僕はサイバーエージェント時代、事業開発やベンチャー投資、M&Aなどを経験してきた。退社後もファンド事業などを手がけ、青柳から連絡が入った時期はちょうどM&A仲介ビジネスを始めようとしていたところだった。
そうした経緯から、newmoでM&Aや事業開発を担うこととなった。
ずっとタクシー業界をウォッチしていた
――2023年の夏頃から、政界でライドシェアに関する議論が盛り上がってきました。
青柳 去年から、規制改革推進会議やデジタル行財政改革会議で議論が行われるようになってきた。それまでは「ライドシェア」という言葉を使うことさえタブーのような感じだったが、ようやくそうしたタブー感が薄れて、政治の議論になってきている。
――newmoを設立したのは2024年1月。ライドシェア解禁の機運が高まってから、起業に至るまでのスピードが異様に早いようにも思えますが。
青柳 実は2017年に、仲間を集めてライドシェアをやろうと構想したことがある。グリーを辞めてからメルカリに入るまでの空白期間で、二種免許も取得した。そういった経験から、私はずっと業界新聞を購読したりして、タクシー業界をウォッチしていた。
昨夏に、菅義偉前首相が長野県でライドシェアに対して前向きな発言をしたという記事を読んで、「えっ、本当に?」と驚いた。そこから小泉進次郎元環境相や河野太郎デジタル相など、他の政治家も議論をするようになってきた。たまらなくなって、政治家の方々に会いにいった。お考えをうかがい、ちょうどそのタイミングで「起業する」と決めていた。
普及、浸透してから事業を始めるのではなくて、「普及するかもしれないな」という段階から走り出すと、最も使われるサービスになりうる。完全なリスクテイクではあるが、「もしかしたらライドシェアがついに来るのかも」と感じた。コロナ禍があってタクシードライバーの数が減ったという背景などから、自分なりの確信があった。