合意か、破談か--日立と三菱重工、経営統合の行方
8月3日、三菱重工業とライバル関係にある大手造船の幹部は、驚くべき言葉を口にした。「具体的な内容はわからないが、三菱が提携か再編に関して、水面下で動いているらしい」--。
その翌日、経営統合に向けて協議中と報じられた、日立製作所と三菱重工。1面ブチ抜きの特報を打った大手紙によると、両社は経営統合に向けた協議を始めることで合意。2013年春に新会社を設立して、主力の社会インフラ事業を統合する方針とされる。
実現すれば、原子力から鉄道、産業機械、ITシステムまで網羅する、世界最大規模の総合インフラ企業を生み出す再編劇だ。両社の売上高は単純合算で12兆円超と、国内の製造業では約19兆円のトヨタ自動車に次ぐ、巨大企業が誕生することになる。
統合報道が駆け巡った4日朝、日立の中西宏明社長は報道陣に対して協議の事実を認め、「夕方に発表しますから」とまで言い切った。少なくとも日立の経営トップが公に交渉の事実を認めた以上、インフラ関連事業の協業が最終合意段階まで来ていたことは事実だろう。
だが、それが両社の中核事業を一体化する事実上の経営統合にまで踏み込むものだったかどうかについては、疑問が残る。
「対東芝」で共通するが
まず日立と三菱重工では、企業規模が違いすぎる。連結売上高は日立が約9兆円で三菱重工が約3兆円。従業員数は日立が36万人で、三菱重工が7万人弱と、売上高で3倍、従業員数で5倍以上もの開きがある。
いずれも歴史の長い会社であり、対等な立場でなければ統合は難しいものだが、これだけ規模の異なる会社で妥協点を見いだすのは、並大抵のことではない。