起業家・成田修造が語る、「プログラミング的思考×お金×越境力」の重要性 何かを生み出せる人を増やす起業家教育が必要
起業家精神は、「越境力」や「飛び出す力」と言ってもいい。分野横断的に越境する人があらゆる領域で必要になっていますが、今の日本で飛び出すことは非常にハードルが高くなっています。
だから、基礎教育をベースに、自分の興味や関心に基づいてどんどん飛び出しながら、その中で学びたいものを学んでいくという教育になっていくべきなのは間違いないと思うのです。しかし今のカリキュラムでは、そうした越境力を重視する教育への転換は難しく、全員にプログラミング教育や金融教育などを足し算していくような状態になってしまっています。
「金融教育」よりも重要な「起業家教育」
――教育現場の「ビルド&ビルド」はよく指摘されるところです。まさに2022年から高校の家庭科で金融教育が始まったほか、起業家教育に力を入れようという動きが出てきていますが、学校での金融教育や起業家教育はどのような形が望ましいと思われますか。
金融教育では、資本主義を体験するためにも実際に投資してみることが一番早い。ただ、僕は金融教育よりも起業家教育のほうが大事だと考えています。お金は何かを加速させる手段であり、それ以前に新たな価値を生み出していくプロセスが前提になければ、それほど意味を持ちません。
国としても新たな価値を生み出す人材が増えなければ、お金だけ増えてインフレとなり、実質的に貧乏な国になってしまいます。だから、若いときからお金に触れて「こういうふうに資本主義は回っているんだ」と理解できる機会を与え、何かを生み出せる人を増やしていく教育が必要です。越境力のある人を称賛、応援するような社会に変わっていく必要もあるでしょう。
そのためには、「起業家は面白いよ」と子どもたちに伝えていくことや、事例を共有していくことが大事。子どもたちが事例を聞いて、「自分もできる」と思えるような、身近なものにしていくことですね。しかし、ここは学校の先生が教える必要はなくて、社会人がいろいろな形で関わってほしいと思っています。
――成田さん自身は、在学中に起業されていますが、どのように越境力を養われたのでしょうか。
14歳~18歳の頃、いろいろなところに飛び出していきましたね。兄の影響も大きかったとは思いますが、14歳のときに父親が失踪して破産、17歳のときには母が脳出血で倒れて半身不随になったことなどもあり、自分を変えなければと覚醒しました。
ただ、学校の勉強よりも、本を読んだり、講演会や映画に行ったり、全然知らない音楽に触れたりと、教養を広げていきました。それが自分の好奇心や思考力といったすべての基盤になっています。
起業家になりたいと思ったのは18歳のとき。スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表した頃でしたし、大学で入ったサークルの先輩にユーグレナの出雲充さんがいたり、大学1年生の頃から100人以上の経営者にお会いしたりする中、起業したいという思いが募りました。
これからは大学生で海外に飛び出していく人も増える気がしていますが、若い人には、起業せずとも、惰性で企業に入るのではなく、「こういう事業や製品を作りたい」と何かを生み出す側に行ってほしいなと思います。
ゼロから発想して“学校っぽいもの”をつくりたい
――お父様は知的な方だったそうですが、何か直接学ばれたことはありますか。