[Book Review 今週のラインナップ]
・『正力ドームvs.NHKタワー 幻の巨大建築抗争史』
・『嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する』
・『財政と民主主義 人間が信頼し合える社会へ』
・『漫画家が見た 百年前の西洋 近藤浩一路『異国膝栗毛』の洋行』
評者・神戸大学教授 砂原庸介
都市を象徴するものは何だろうか。人口や物資、そして資本が集まる都市は、利便性の高い暮らしを人々に提供する。しかし、その暮らしは均質なものになりがちだ。
農村部はしばしば「地方」と一くくりに形容されつつも、同時に他にはない自然の価値が称揚される。それに対して、人工的な都市はその固有性を主張しにくいところがある。
「ここにしかない」建築物の価値 壮大なアイデア、具現化の困難
本書は、東京を舞台に、権力や金銭といった資源を動員して「世界でここにしかない」巨大建築物を作り出そうと挑んだ者たちの歴史を描く。最も大きいものが何かを象徴する、というのはいかにも前世紀的な発想のようにも捉えられるが、グローバル化の進んだ現代においてこそ、大きさのランキングが世界的に意識されることは無視できない。
巨大建築物は誰かが思い立てばすぐにできるわけではない。本書はそのロジスティクスがいかに困難に満ちたものかを叙述する。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら