「キンチャクガニの研究」で推薦合格した東大生の素顔、増える年内入試の実際 1浪して2回目の推薦入試に挑んで薬学部へ

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しかし学内では、そんな彼ら彼女らの存在感は強く、どの子も東大に新しい風を吹かせています。今回はカニの研究で東大に合格した、薬学部推薦8期生の山田遼祐(やまだ・りょうすけ)さんにお話を聞きました。

母校は推薦での東大合格実績なし、山田さんが初挑戦

山田さんは、中学まではテニス部の活動に専念し、研究とは無縁の生活を送っていました。しかし、高校生になって、友人の1人がテレビでキンチャクガニの特集を見かけ、「一緒に研究をしないか」と声をかけてくれたことで研究の道がスタートしたといいます。

キンチャクガニは、両手にイソギンチャクを持った奇妙なカニで、研究者による先行研究があまりされておらず、その正体は謎に包まれたままでした。

とくに「なぜハサミの機能を捨ててまで両手にイソギンチャクを持っているのだろうか」「そのイソギンチャクはどうして透明になっていくのか」が謎だったそうです。この謎に対して、ほかの課外活動と並行しながら、自然科学部に所属し、友達と一緒になって研究を重ねました。

ほかの課外活動と並行しながら、自然科学部に所属しキンチャクガニの研究を行った
(写真:西岡氏提供)

学校での活動のため、いろいろな苦労やアクシデントがあったそうです。いちばんのアクシデントは、新型コロナウイルスの影響でした。キンチャクガニをすべて輸入に頼っていたため、研究がストップしてしまう時期があったのだとか。

自身の研究成果を論文にまとめ、さまざまな大会に出場。写真は「マリンチャレンジプログラム全国大会」の時のもの
(写真:西岡氏提供)

そんな苦難の中でもひたむきに実験を重ねた結果、イソギンチャクは海の中だと基本的に毒を持つと認識されているため、自身がイソギンチャクと擬態することで敵から身を守る習性に気づいたそうです。

大人にもできないような研究を進めていた山田さんは、だんだんと東京大学に行きたいと思うようになります。そして、一般入試での東大受験だけでなく、推薦入試という選択肢も考えるようになりました。自身が今まで行ってきた活動をプレゼンして、そこを評価してもらえる受験もやってみよう、と考えたのです。

東大の推薦入試のための準備をする中で、今までやってきたことを自分の中で振り返ることにもなると考えたそうです。母校のサレジオ学院は推薦での東大合格実績はなく、山田さんが初の挑戦でした。

高校3年生の秋に出願をし、一次試験の書類審査は通ったそうです。しかし、難化の年と呼ばれる2022年度の共通テストで実力を発揮することができず、最終審査は不合格に終わってしまいました。

浪人を経て東大薬学部に推薦合格

浪人時代は予備校に通って一般入試の対策をするも、推薦入試への挑戦を諦めきれず、再度挑戦を決意。ちなみに推薦入試でも、一般入試のように浪人しての受験が可能です。しかし通常と違い、浪人生に対しては浪人中の活動が書類要件に追加されます。そのため、後輩らが引き続き行っていた研究のメンターとしての活動を加えました。

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