衝撃の最後になる?「不適切にも」脚本の巧みさ 何も起きなかった9話、市郎と純子の運命は?
第9話では、いよいよ最終話の結末へ向けたストーリー展開になるかと思われたが、なんとこれまで通りの流れで終わった。
職場の妊活者から、まったく意図していなかった発言に対してマタハラで告発され、休職を強いられる渚を通して、この問題のデリケートさと、一緒に仕事に向き合う人にとっての難しさを、妊活者当人と周囲の人たち双方の視点から客観的に示した。
前半の1〜4話と同じく、テレビ局だけではなく、一般社会との共通性を持つ社会問題を扱うことで、視聴者の共感性を高くしようとしていることがうかがえる。
その一方で、マッチングアプリを題材に、恋愛への積極性に欠ける草食系の令和男性と、一歩間違えればストーカー行為という通信ツールのない時代の昭和男性の恋愛行動をコミカルに対比させた。昭和のムッチ先輩と令和の秋津真彦(磯村勇斗が1人2役)がともに失恋する姿から、それによる傷心の深さは時代や社会背景を超えて普遍性があることも示した。
視聴者がもっとも気になっているであろう純子の運命を変えるための直接的なアクションはなかったものの、市郎は渚を誘い、ゆずる(古田新太)とともに、純子の父、夫、娘という血縁者がそろって、享年28の純子の誕生日に墓参りに訪れる。視聴者へ純子に訪れる悲運に思いを馳せさせた。
計算された嵐の前の静けさか
そんな第9話は、「社会性」「笑い」「涙」のバランスがほどよく取られていた。なかでも、ラストで令和社会を知って視野が広がった純子が、彼氏の1人であるムッチ先輩のプロポーズを断り、「世界は広くて、いろいろな生き方があることを知ってしまった」と新たな道へ踏み出す姿は、9年後の彼女の死を知る視聴者に、切なく悲しい複雑な感情を抱かせる一方、令和に行ったことで純子が自らの未来を変えようとしていることに、希望を持たせた。
第9話のラストで市郎は、渚へ「お母さん(純子)に会いに行こう」と昭和へのタイムリープに同行させる。それは、最後の燃料を使った片道切符の時空移動になり、純子の運命を変えようとする市郎の覚悟がにじんでいた。
特別なことが何も起こらなかった第9話は、これまでの回と比較してインパクトが弱かった。しかし、それは計算された嵐の前の静けさのようにも感じ、最終回へと向かう脚本の巧みさを感じる。
最終話の予告では「娘を救うのが親の役目だろ」という市郎の言葉がある。どのような急展開が待ち受けているのかまったく予想できないが、笑いと涙は紙一重だ。大笑いして笑顔で泣ける、激情に駆られるような大きな衝撃のあるハッピーエンドが待っている予感がある。
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