SL列車、引退だけでなく「値上げ」も増えた事情 JR各社が指定席料金アップ、今まで安すぎた?

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もっとも、JR東日本はこの際に「当社を取り巻く経営環境の変化」を理由として、各地の「のってたのしい列車」(観光列車)の指定席料金をすべて840円に改定しており、SLばんえつ物語の指定席料金値上げもその一環である。

いずれにせよ、このところSL列車の値上げは広がっていたのだ。稼働するSLの減少やメンテナンスコストの増大、そしてコロナ禍以降の鉄道各社の経営環境の変化の中、値上げはやむをえないという状況になってきたといえる。各社はSL列車の指定席料金などを改定するほか、JR九州のようにSLの運行を終えるケースもある。

電車やディーゼルカーとは大幅に異なるSLは維持管理にお金がかかることを考えると、特別料金の不要な快速列車で、さらに指定席料金も一般の列車と同レベルという今までが安かったともいえ、値上げはいたしかたないともいえる。

私鉄はネット予約に注力

SL列車は私鉄も運行している。秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」は、2023年4月1日にSL指定席券(大人・子ども同額)が740円から1100円に改定された。

同鉄道のSL指定席は、現在は自社サイトで予約するシステムとなっているが、2019年9月末まではJR東日本管内の「みどりの窓口」で扱っていた。その後いったん自由席のみとなり、2020年にSLの全般検査に伴い運休した後、2021年2月に運行を再開してからは自社サイトでの予約に切り替えた。360円の値上げとなったが、その分ネット予約システムを整備して利便性を高めている。

また、東武鉄道の「SL大樹」は座席指定料金が大人760円~1080円(子ども半額)となっており、ネット予約も可能になっている。JR各社が指定料金を値上げした中では相対的に安いといえる。

SL大樹
東武鉄道の「SL大樹」(編集部撮影)

「強気」の価格設定が目立つようになったSL列車。だが、その維持管理コストを考えるとやむをえないといえるだろう。SLは観光の目玉というだけでなく産業遺産であり、今後も守っていくためには、その費用をまかなえる料金設定が必要なのだ。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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