リアルな「体験型キャリア教育」、狙いは子どもたちの起業家マインド育成 好きなものに打ち込む子「勝ち切る執念違う」
「自分もやれるんだ」という意識を持たせ、起業家人口を倍に
広くキャリア教育を行う際の大きな課題は、おそらく個々の子どもたちのやる気の差だろう。自発的にイベントに行かないような子どもたちに、どう将来への関心を持たせるか。教員のリソースが割かれるべきはこの点であるはずだ。長竹氏も「先生方は教えることのプロなので、そこに全力を注ぐためにも、我々のような外部の力も活用してもらえたらと思います」と言うが、この問題は同社のサービスにも見ることができるようだ。
アワードに参加する子どもは、二種に分類することができる。親の勧めやサポートを受けつつ、子どもが自発的に取り組む「個人エントリー」と、学校でプレゼン講座を受けたことをきっかけとする「学校エントリー」。このうち、後者の中には、さほどの熱意がない子どももいるという。学年単位で申し込めるプレゼン講座は、アワードへのエントリーを条件にしているからだ。竹内氏は語る。
「当社の取り組みを子どもがどうやって知るか。ほとんどの場合、保護者か教員の方の介在が必要です。東京都など首都圏や大阪府周辺、愛知県などには職業体験施設もあるためか、保護者の方の意識も高く、個人でエントリーされるご家庭も多い。そうした意味では、子どもたちの機会には地域差もあると思います。だからこそ、私たちはオンラインでのサービスにも力を入れているのですが」
だが、教員が介在して取り組む場合は、学年・学校単位でのエントリーが可能になり、多くの子どもに機会が生まれる。もちろん竹内氏も、たくさんの子どもたちがキャリア教育を受けるべきだと考えている。
「VUCAの時代とされる今、いい大学に行けばいい仕事に就けて安泰――というわけにはいきません。学校を卒業してもニートになってしまう若者の割合や、いわゆる就職のミスマッチを減らすためにも、早くから将来のキャリアについて考えることは大切だと思います」
その一方で、一律の取り組みで効果を出すことの難しさも感じている。
「アワードで受賞するところまで進むのは、やはり自発的に取り組んでいる個人エントリーの子どもが多いですね。自らの好きなことをプレゼンしているので、最後の最後に勝ち切る執念が違う。日本の子どもたちは、『自分もやれるんだ』という意識がどうしても低い傾向にあり、起業家マインドが育ちにくい。そこを改善したくて、私たちはアントレプレナーシップ教育に注力しているのです」
竹内氏は自社のサービスを通して、日本のキャリア志向自体の変革を目指している。
「現在の日本の起業家人口は5%程度ですが、ゆくゆくは10%に上げていきたい。そのためにはまず、起業に関心がある若者を20%ほどまで増やす必要があります。アワードやレモネードのプログラムもそのための取り組みの一環。やるべきことが多く簡単ではありませんが、できることから地道に取り組んでいきます」
(文:鈴木絢子、写真:バリューズフュージョン提供)
東洋経済education × ICT編集部
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