リアルな「体験型キャリア教育」、狙いは子どもたちの起業家マインド育成 好きなものに打ち込む子「勝ち切る執念違う」

生身のコミュニケーションがパッションに火をつける
本サイトでも紹介した小学生起業家のレウォンさんが挑んだ、「スタートアップ Jr.アワード」。小中学生を対象にして行われる、社会課題解決のアイデアを競うプレゼン大会だ。ほかにも、登録企業へ職業体験の申し込みができるプラットフォーム「職業体験ドットコム」や、実際に働く人に出会えるイベント「職業体験EXPO」など、子どもと企業をつなぐ体験型キャリア教育のサービスを展開するのが「バリューズフュージョン」だ。代表取締役社長を務める竹内慶太氏は、子どもたちに働く楽しさを味わってほしいのだと語る。

竹内慶太氏
「当社の発想のスタートは、アメリカの習慣をもとにした『いいね!レモネード』の取り組みにあります。これは夏休みに子どもがレモネードを販売することで、自立心や経済観念、起業家精神などを育むもの。こうしたリアルな経験を通じて、楽しみながら仕事についての意識を高めていってほしいのです」
リアルな経験で子どもたちの力が伸びる例を、立ち上げから6期目ながら、同社社員は数多く目にしてきた。例えば2020年のアワードに参加し、波力発電についてのプレゼンでファイナリストとなった小学5年生(当時)がいた。それがきっかけで、彼は複数の企業と縁ができた。中学生になった現在は兄と共に、大手海運会社の商船三井とコラボレーションを行っている。バリューズフュージョンの執行役員である佐々木純子氏はこう語る。

サステナビリティ推進事業責任者
佐々木純子氏
「彼の原動力は『海が好きだから』ということでした。自分の好きなことをテーマにするのは大切ですが、それだけでなく『他者との関わり』が彼のアイデアの可能性をより広げたと思います。今や彼らは、ほかの子どもたちに知識を共有するアンバサダーやファシリテーターも務めるようになりました。最前線のビジネスパーソンとのリアルな出会いで、彼らは新しい役割を得たようです」
こうした「役割」が、やがて実社会でのキャリアにつながっていくのかもしれない。竹内氏も言葉を継ぐ。
「私たちはオンラインでのプレゼン講座も実施していますが、対面であるか否かで、体験価値に劇的な差があるとは考えていません。オンラインなら場所や時間を選ばないメリットもあり、受講した子どもたちにも好評を得ています。しかし、子どもたちのパッションに火をつけるのは、やはり生身の人間とのコミュニケーションであるようです」