クラスの5人に1人、繊細なHSCにとって居心地よい教室をつくる教員の特徴 大事なのは「謝る誠実な姿」、NGワードにも注意

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生まれつき敏感な気質を持つ子どもHSC(Highly Sensitive Child)は、約5人に1人いるといわれ、決して珍しい存在ではない。しかし、非HSCの子と比べて感受性が豊かなため、コミュニケーションに悩む教員も少なくないだろう。HSC特有の思慮深さや繊細な感覚に気がつけないと、悪意なく傷つけてしまう可能性もあるが、NPO千葉こども家庭支援センター理事長の杉本景子氏は「『弱い者を助ける』という認識は根本的に誤り」と強く主張する。HSCがストレスやプレッシャーを感じることなく学校生活を送るために、教員はどのような環境を心がけるべきか。杉本氏に聞いた。

HSCの鋭い観察力や感覚を学級運営の道標に

HSCの敏感な気質は、生後間もない頃から表れる。HSCは赤ちゃんの頃から、非HSCには平気な刺激で目を覚ましたり、泣き出したりするという。成長するにつれ、音・におい・光の明るさや人の気持ちにとても敏感で「周囲の子とはちょっと違う」と気づけるポイントが出てくる。

主に、4つの性質「物事や情報を深く受け取って考えて処理する」「過剰に刺激を受けやすい」「感情の反応が強く共感力が高い」「ささいな刺激を察知」のすべてを兼ね備えているかどうかで判断できるが、これは、脳の活動と関係がある。HSCは、物事の複雑なことや細かいことを認識する脳内の部位や、ほかの個体の行動を見て自分も同じ行動を取っているかのように反応する神経細胞が活性化しやすいことが明らかになっているのだ。ここで注意すべきは、HSCは必ずしも内向的ではない点だ。約30%は外向的なHSCだといわれており、社交的か否かのイメージで判断するのは早計だ。

杉本景子(すぎもと・けいこ)
公認心理師・看護師・保護司。NPO法人千葉こども家庭支援センター理事長
千葉市スクールメディカルアドバイザー
(写真:本人提供)

一方で、「HSCの生徒を見つけ出そうとする必要はない」と語るのは、教育現場などにHSCへの理解を広める活動をする杉本景子氏だ。HSCは病気や障害とは異なり「気質」であるため、治療や合理的配慮は要らない。HSCとカテゴライズして「特別なケアが必要な子」「弱くて助けが必要な子」というレッテルを貼るのは誤りだ。

「HSCが安心できるクラスは、クラス全員にとっても居心地のよいクラスです。先生方は、HSCの知識を持ったうえで、あくまでも一人ひとりの気質に注目して接してください。重要なのは、クラスの約5人に1人がHSCの個性を持つこと、そして人間の敏感さや思慮深さのレベルに違いがあること、この2つを前提に発言や接し方を工夫することです。HSCが不快に思うことを取り除くことは、クラス全員に好影響を及ぼします」

HSCは誇るべき長所でもある。物事の観察力に優れ、変化に機敏なHSCは、集団の不協和音をいち早く察知できる。杉本氏はその強みを「炭鉱のカナリア」に例えてこう説明する。

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