年間100超の学校・教員に「ばん走」する石川晋、依頼が後を絶たない納得理由 授業づくりの提案から学校課題解決の相談まで

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
「伴走型支援」。長らく福祉の世界で実践されてきたが、近年では学校外の第三者が「伴走者」として学校現場に入り、教職員の働き方改革、業務改善、主体的・対話的で深い学びが実現する授業づくり、教員研修などさまざまな場面で支援を行っている。NPO授業づくりネットワーク理事長の石川晋氏は、自らを「伴走者」ではなく「ばん走者」と名乗り、2017年より北海道から九州まで公立私立問わず年間100を超える学校に足を運び「ばん走」を続けている。ばん走とは何か。ばん走により、学校や教職員はどのように変化するのか。学校に元気を取り戻すにはどうすればよいのか。そのヒントを探るべく、石川氏のばん走の1日を取材した。

「ばん走」は、一言で言うと「見る」仕事

教育関係者なら、その名前を一度は耳にしたことがあるだろう。

石川晋氏。ワークショップ型授業や特別支援教育などさまざまなテーマに先進的に取り組んできた教育研究団体「NPO授業づくりネットワーク」(1988年設立)の理事長を2013年から務め、機関誌『授業づくりネットワーク』(年3回刊行)による情報発信やセミナー開催などを行っている。

国語科教育のエキスパートとしても知られる石川氏は、北海道で中学校国語科教員を28年務め、17年3月に退職し上京。新たな道を模索する中、当時、東京都国立市・国立第一中学校の理科教員で現在は軽井沢風越学園スタッフである井上太智氏から「僕の理科の授業を見に来てくれませんか?」と声をかけられたのが、ばん走の始まりだったという。

「ばん走は、一言で言うと『見る』仕事。当たり前ですが、学校生活の大半は、授業です。いくら給食が充実していても、放課後の活動をよくしても、本丸の授業が子どもたちにとって楽しくないと、学校が『暮らしやすい場所』にならないですよね。学校には、ベテランから若手までさまざまな教職員がいます。その方が困っていることや『一緒に考えたい』と思っていることを引き出し、その方の授業(教室)を見る。その後、僕に見えたものをその方との対話を通して一緒に見てもらうことで、リフレクションを促す仕事であると捉えています」

石川 晋(いしかわ・しん)
NPO授業づくりネットワーク理事長、学校および学校教育関係者の「ばん走者」
1967年北海道旭川市生まれ。北海道教育大学大学院修士課程・国語科教育専修修了。89年以降28年中学校国語教員を務め、2017年3月に退職。その後、全国の学校や教員に「ばん走」しながら活動を続ける。『対話で学びを深める 国語ファシリテーション』(共著/フォーラム・A)、『学校でしなやかに生きるということ』『学校とゆるやかに伴走するということ』(ともにフェミックス)、『くらしと教育をつなぐWe』(フェミックス)では隔月でばん走の様子を連載している

当初はボランタリズムを貫いていたが、ぽつぽつ継続するうちに全国各地から「僕の(私の)授業を見てください」「うちの学校に来てください」と声をかけられるようになり、「ボランタリズムを根っこにおいた生業」として成立するようになったという。

なぜ「伴走者」でなく「ばん走者」なのか

近年、学校外の第三者が「伴走者」として学校現場に入り、学校や教職員のさまざまな課題を支援するケースが増加傾向にある。オンライン対話で教職員のキャリア、学級経営、授業などの悩みに伴走するサービスなども存在し、教育の世界で「伴走」という言葉が頻繁に使われるようになってきている。

「いろいろな伴走の方法があっていいと思っていますが、僕が大切にしているのは、まず現場に行って、見て、話すこと。それも1回きりでなく最低でも複数回足を運び、校内のいろいろな人と関わりながら学校・教室にどっぷり入って対話やリフレクションを重ね、最終的にその学校や教職員の役に立てるような関わりを継続していくこと。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事