幼少期から創意工夫、元素に魅了されて商品開発へ

――小学生から起業家として商品開発に取り組まれていますが、幼少期は何に興味を持っていましたか?

リ・レウォン
レウォン
中学生起業家 ラーニングイノベーター
株式会社polarewon CEO
小学4年生で「元素カルタ」を考案し、商品化を実現。新感覚の漢字学習ツール「漢字mission」で「スタートアップ Jr.アワード 2020」大賞など受賞多数。「自身の問題解決が社会問題解決につながる」を理念に小学生で起業。NHKドキュメント20min「12 歳、社長になる」ほか、メディアで注目される新進気鋭の起業家

工作が好きでした。保育園の頃は児童館のアートクラブで工作を教えてもらい、自宅で「こうしたらもっと良くなるかも!」と試行錯誤していました。シャボン玉に絵の具を混ぜて画用紙に乗せたら泡の模様がすごく綺麗だったり、真っ白い靴に画材で色付けしてオリジナルの靴にしたり、色々楽しかったことを覚えています。

あとは読書も好きでした。よく絵本を借りていましたが、いろいろ読むうちに科学系の本に興味を持って。「元素」という言葉が頻繁に出てくるので、何だろうと調べたりしていました。

――それが、レウォンさんが商品化した「元素カルタ」につながるんですね。

純粋に、元素ってすごい!面白い!と思ったんです。特に、元素が何に使われるのかに興味がありました。でも、一般には「元素=暗記」「難しい」というイメージがあると知って、「こんなに面白いのに……」と残念に思いました。そこで、「楽しく学べる方法がないなら、自分で作ればいいじゃん!」って。もともとカードゲームが好きで色々自作していたので、元素もカードにしたら楽しくて。いっそカルタにしたら面白そうだなと考えました。

元素カルタ
元素カルタ

※元素の身近な用途と解説を読み札とし、元素のイラストを絵札にしたプロダクト。東大CAST監修のもと、118個の元素が75枚のカードにまとめられている

9分割ノートで思考整理、情熱でプレゼンを「レベチ」に

――起業プレゼン・リアリティショー「メイクマネー U-24」では、堀江貴文さんや成毛眞さんからプレゼン能力を高く評価されました。SNSでも「プレゼンがレベチ」と大きな話題になりましたが、どこでスキルを習得したのですか?

プレゼン自体は特別練習したわけではありません。とにかく、もっとたくさんの人にこのカルタを使ってもらいたいという気持ちだけでした。当時はめちゃめちゃ緊張していて、実は足がブルブル震えていました。本当に緊張した……(笑)。

プレゼン動画は、小学校5年生で新しいパソコンを買ってからKeynoteで作っています。それまでスマホやパソコンを使ったことはありませんでした。

思考を整理するときは、母に教えてもらった「9分割ノート(曼荼羅チャート)」を使っています。箇条書きはどうしても、上の項目から優先順位がついてしまいますよね。9分割ノートは、中心の目的からの視覚的な距離が近くて均等です。それに、8マスすべてを埋めたくなるんです。だから、「8個書き出す」ためにも「8個にまとめる」ためにも深く考えられるし、その過程で頭が整理される。日常的にもノートにサクッと書いています。

9分割ノート
元素カルタのデザインを考える際に書かれた「9分割ノート」

小4で学校に違和感、自発的に「学ぶ」ために不登校を選択

――小学4年生から現在まで、学校に通わない生活をされていますが、それはなぜですか?

実は、小学3年生までは楽しく学校に通っていて。むしろ、「学校に行かないなんてもったいない!」と思っていたんです。でも、進級して先生が変わってからいろいろと疑問を持ってしまって。例えば、板書を工夫してノートにまとめたら、「黒板通りに書き直しなさい」と言われたり、自分のアイデアを発表しても、正解と違うとスルーされてしまったり……。学校は自分で考えて動いたり発言したりする場所のはずなのに、「おかしくない?」と思うようになりました。そこで一度、「学校」や「勉強」の意味を見直したんです。

考えてみると、「勉強」は「勉める」+「強いる」、一方で「学ぶ」は「まねぶ」が古語で「模倣する=誠に学ぶ」という意味。2つの違いは、自発性があるかどうかだと思って。「勉強」は誰かから強いられるものだけど、「学ぶ」は自分が知りたいと思うことから始まる。それなら、「学ぶ」のほうがいいじゃん!と思いました。ちょうどコロナ禍の一斉休校が重なったのもあって、学校じゃなくて自分で調べて学べばいいんじゃない?と思うようになりました。

――学校に通わないと決めたときに、ご家族にはどのように相談しましたか?

普通、子どもが「学校行きたくない」と言ったら親はビビりますよね(笑)。僕の母も安易に認めたわけではないのですが、公開授業を見て「ああ、これはたしかに行きたくないよね」と理解してくれました。そこから一緒に「『勉強』と『学び』は何が違うんだろう」と考えてくれて。登校を無理強いせず、ともに悩んでくれました。

でももし、自発的な学びを後押ししてくれる先生に巡り会えていたら、今ごろ成績もよかったのかもしれない……。そういう人生もアリだったかな、と考えることはあります。

とはいえ、そこで学校に疑問を持ってしっかり向き合えたのはよかったです。今は中学生ですが、引き続き学校にはほとんど行っていません。

病んでも「幸せ」を探求、周囲のかっこいい大人から学びたい

――学校の意義についてどう考えていますか?また、今まで、年齢のせいで諦めざるをえなかったことや不都合だったことはありましたか?

最近、「幸せってなんだろう」ってすごく考えるんです。僕の場合、自分がやりたいことや楽しいと感じることを、好きな人たちと一緒にワイワイ取り組むことも、幸せの1つだと思っています。

幸せの達成条件は人それぞれ違うのに、将来幸せになるには、いい会社に入らないといけない、そのためにはいい大学、いい高校、いい中学、いい小学校……そもそも「親ガチャ」!?と、多くの人が逆算しています。だから皆「この先に幸せがあるから頑張れ!」と言うのですが、「過程が苦しくても本当に幸せなの?」と疑問なんです。

しあわせ
画像はレウォンさんのYouTube動画「糸島すてきなヴィレッジ!」から引用

学びはきっと、人・場所・年齢に縛られるものではない。本来、学びたい人の分だけ教えられる人がいるはず。自分にとっての「かっこいい魅力的な大人」から、それぞれ真似て学んでいければいいな……と考えたりします。例えば僕は、元素カルタを作る過程で比率や文章を学んだり、ご縁をいただいた方々との関わりを通して社会のことを学びました。

とはいえ、僕は学校が無駄だとはまったく思っていなくて。今でも「通い続けていたほうがよかったかな」と思うこともあるし、不登校を推奨しているわけではありません。だけど、僕みたいに体調を崩して病んでしまうなら考え直してもいいと思います。小さい頃から「勉め強いられ」てきた結果、我慢を美徳だと思ってしまうのは、大人になってからもよくないと思います。

もちろん苦労もあって、心が大破したこともありました。企業に提案していいところまで進んでいたのに、最後の最後で「子どもだから」「個人だから」と断られたことも何度もありました。「なんで俺が小学生に付き合わないといけないんだ」と突き放されたこともあって、「ああ、こうなるんだな」と悲しくなりました。実は最近も、心が折れてめっちゃ病んでいました(笑)。でも、病んでいるなりに学ぶこともあって、今も新しいことに挑戦しています。

――今後、どのような生き方をしたいですか?

僕は現在、福岡県糸島市のまちづくりに協力しています。まちづくりに本気で取り組む人たちがかっこよくて、巻き込まれました(笑)。でもいろいろ悩んだ結果、僕もやりたいことをやる過程に幸せを感じたいと思ったんです。本気の大人たちに囲まれながら、これからもいろいろなことに挑戦してみたいです。

僕はすべての選択肢をめちゃめちゃ考えるタイプですが、ここ数カ月で、「案外何とかなるのかもしれない」と思うようになりました。これまで「もうダメだ」と思うことが何度かあったけどまだ生きているし、どうなっても学びはある。そんなにつらくならず、全部面白がれたらいいなと思います。

(文:末吉陽子 編集部 田堂友香子、注記のない写真:レウォンさん提供)