リアルな「体験型キャリア教育」、狙いは子どもたちの起業家マインド育成 好きなものに打ち込む子「勝ち切る執念違う」

自治体との協働で、キャリア教育の教員負担を減らしたい
竹内氏は、自身が中学時代に経験したリアルな職業体験のことをよく覚えている。
「私は明石市出身なのですが、中2のときに5日間、建設業の会社で仕事をさせてもらいました。テーマパーク型やイベント型でなく、時間をかけて現場を見たことで、『ああ、自分はものづくりはだめだな』と気付くことができました(笑)。自分の強みは対話力やコミュニケーション力にあると感じ、それを磨こうと思ったのもこのときです」
現在も、全国の9割の中学校が学校主導の職業体験を実施しているとされる。竹内氏もこの取り組みには大きな意味があると実感しているが、会社を立ち上げた今、教員の負担も解消するべきだと考えるようになった。
「先生方は生徒の受け入れ企業を探すのに、平均して30~40社にアプローチすると聞いています。ただでさえ激務なのに、こうした通常業務外のことに割かれるリソースがあまりにも大きい」

そこで今後は、自治体との協働にも注力していきたいと考えている。この2月には、相模原市と共に中高生向けの職業体験イベントを開催した。地域活性化や若者の市内回帰など、狙いは多々あるが、竹内氏は「とにかく子どもたちに、自分の街のことを知ってほしい」と強調する。
「私も就職活動のときは、ランキング上位の人気企業を上から受けていくような選び方をしていました。今になって振り返ってみれば、地元の明石市内にも多くの優良企業があったのに、それをまったく知らなかったのです。同じように、多くの若者が都会の有名企業ばかりに目を向けていて、地域のことを知らないのではないでしょうか。自分が暮らす地域はどんな企業に支えられているのか、どんな産業が根付いているのか。まずはそれを知っておくことが、将来の選択肢を増やすことにもつながるはずです」

クリエイティブ&PRディレクター
長竹直哉氏
同社執行役員の長竹直哉氏も、周知の活動の重要性を語る。
「学校からプレゼン講義の依頼があれば、単にその学校だけのイベントとして終わらせず、教育委員会や地域活性の担当部署など、自治体との連携も深めるようにしています。その際には生徒の意識変化などのアンケートをエビデンスとして示すことで、私たちのサービスへの理解を得ることも大切にしています。市の広報メディア等にも掲載してもらえれば周囲の学校にも情報が広がりますし、地域の方に学校の取り組みを知っていただくことで、職業体験の受け入れなどについてもさらなる展開が期待できます。また、子ども向けはもちろん、学校の先生に向けたプレゼン指導のオンライン講義も実施するなど、多方面への発信を続けています」