北陸新幹線、敦賀延伸開業が生む「直通と分断」 福井県が東京と直結、関西へは乗り換え必須
FGTの雲行きが怪しくなる中、2017年10月に北陸新幹線の敦賀駅は1階に在来線特急ホームを設ける形に設計を大幅変更。長い跨線橋を渡らずに、3階の新幹線ホームと1階の在来線特急ホームを縦移動だけで乗り換えができる構造に改めた。
だが、この変更によって敦賀駅工区の工期は逼迫。加賀トンネルの亀裂発生もあり、それまで掲げていた2022年度末の開業予定を約1年遅らせることとなった。
新幹線の開業に合わせ、これまで金沢や福井と大阪・名古屋方面を乗り換えなしで結んでいた在来線特急はすべて敦賀止まりとなり、新幹線との乗り換えが必要になる。敦賀駅での3階新幹線ホームから1階の在来線特急ホームへの乗り換え所要時間は最短8分としているものの、JR西日本が1月に社員らを動員して実施したシミュレーションでは10分以上を要した。混雑時の乗り換えには課題がありそうだ。
北陸地方は関西との結びつきが強く、新幹線開業による乗り継ぎの不便さを懸念する声は少なくない。越前市内を走るタクシードライバーの男性は「首都圏から便利になるのはいいが、観光客は関西からの人が多く、乗り換えで敬遠されないかが心配。せめて敦賀より先に(新幹線が)延びるまでは在来線特急を残してほしかった」。開業前の越前たけふ駅を見物に来ていた市内の60代女性も、新幹線への関心は高いものの「やっぱり特急がなくなるのが残念。関西のほうがつながりは強いから」と、関西方面との「分断」を不安視する。
「敦賀から先」はいつになるのか
だが、敦賀から大阪方面への延伸はまだ先が見えない。2016年、与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームは延伸ルートについて、福井県小浜市付近と京都駅を経由する「小浜・京都ルート」の採用を決定した。だが、環境影響評価(アセスメント)の遅れで、着工時期は見通せない。同ルートは大半がトンネルとなることから、京都府内では環境への影響などを懸念する声も強い。かつて候補となっていた、米原経由のルートを求める意見も浮上している。
今回の敦賀延伸開業で、新潟・富山・石川・福井の北陸4県がついに新幹線でつながった。冬の降雪にも強い新幹線は、首都圏と北陸地方を短時間で結びつけるだけでなく、域内の移動を改善する効果も期待される。新幹線延伸開業によって北陸地方が注目を集めることで、能登半島地震の復興支援にも貢献しそうだ。
一方で、これまで直結していた関西方面とは最低1回の乗り換えが必要となり、現時点ではいつまで続くかも見通せない。北陸新幹線の延伸区間は必ずしも「快走」とは言い切れないスタートを切った。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら