日本「PISA2022」3分野すべてで世界トップレベルの真因、読解力は2位に急上昇 国立教育政策研究所・大野彰子氏に聞いた

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その一方で、「教員には、デジタル機器を取り入れた授業の準備のために十分な時間がある」「学校には技術的なサポートをする十分な資格を持った補助員がいる」という項目において、日本はその割合が低い傾向にあることがわかり、今後の課題も残されています。これらの課題を改善するためには、教員への支援体制の強化、学校におけるインフラ整備などが重要となります。

子どもたちが 安心して学べる環境を

──「PISA2022」では、「日本の生徒は学校への所属感が高い」という結果が出ていますが、不登校の児童生徒の数は増加の一途をたどっています。この乖離をどう捉えたらよいのでしょうか。

「PISA2022」では、「(自分は)学校の一員だと感じている」「他の生徒たちは私をよく思ってくれている」「学校ではすぐに友達ができる」などの質問を通し、生徒の学校への所属感を調査しました。

その結果、OECD平均では生徒の学校への所属感は2018年から2022年にかけて悪化しましたが、日本は所属感がもっとも向上した国の1つとなりました。この要因としては、先ほどから何度もお話ししていますが、コロナ禍のさまざまな制限下でも学校現場で先生方がさまざまな工夫をこらして教育活動をしてくださったことが大きく、日本の教育の強みとして捉えるべきだと思います。

一方で、PISAは国際的な実施基準により、抽出された全日制・定時制の高校に通学している生徒が調査日に受けた結果を集計し、日本全体の姿を予測する調査で、通信制の高校は対象に入っていません。長期欠席も含めて欠席した子の意見や感じ方なども含まれていないため、そのような生徒の結果は反映されにくかった可能性はあります。

文部科学省では、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」を2023年3月に発表し、取り組みを進めています。学びたいと思ったときに学べる環境を整えること、ICTを活用しながら「チーム学校」として心のSOSを見逃さないようにすることなど、誰もが安心して学べる環境づくりが大切です。

──「PISA2022」の結果を踏まえ、日本の教育の未来のために必要なことはどんなことでしょうか。

PISA調査のような国際調査に継続的に参加することによって、よい点や課題点も含め日本の教育の姿を客観的に捉えることができます。この調査結果を参考に、国の教育政策を不断に見直し改善していくことが大切だと思いますし、国だけでなく、自治体や学校でも議論の材料にしていただきたいと思います。

2023年6月に閣議決定された教育振興基本計画(2023〜2027年度)におけるキーワードは「ウェルビーイング」です。「ウェルビーイング」は、OECDで以前から重視されてきた考え方ですが、日本の教育振興基本計画に初めて書き込まれました。

「将来、自分が社会を作っていく」といったいわゆる「エージェンシー」あふれる人材を育成していく教育ももちろん大切ですが、「ありのままの自分で生きられて幸せ」と実感できるような教育も、もう1つの柱としてとても大切です。

学校関係者・教育関係者のみならず、社会全体で子どもたちのウェルビーイングの向上のため、さまざまな学びの場を提供したり、新たに作っていく努力を重ねることが求められているのではないでしょうか。

(企画・文:長島ともこ、注記のない写真:編集部撮影)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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