データで読む日経平均株価「バブル超え」の真実 1989年より企業利益は増えたが、源泉地が激変

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これは東証上場会社数の増え方を見れば、当然の話だ。1990年は1752社(1989年のデータは未確認)。その後、新興市場の拡大などにより東証上場会社数は増え続け、2023年には3933社と1990年比で2倍以上になっている。

逆にいえば、現在の上場1社当たり株式時価総額はバブル最盛期より3割ほど低い水準だ。現在の東証時価総額の高さは、バブル最盛期との比較では「数量効果」が大きいと言えそうだ。

1989年から現在まででは、家計保有の株式等・投資信託受益証券の時価総額は約1.5倍に増えている。これはこの間の東証時価総額の増加率とほぼ同じ。「貯蓄から投資へ」という政府のかけ声の割には、現預金中心である家計の金融資産保有の姿勢はさほど変わっていないようだ。

興味深いのは、バブル最盛期に株とともに暴騰した不動産価格の状況だ。内閣府のデータによると、1989年から2022年では、ストックの国富全体は3231兆円から3999兆円と1.2倍程度に増えている。

しかし、その内訳を見ると、土地は逆に2266兆円から1309兆円に低下したまま。まだ4割安の状態だ。バブル最盛期超えと言っても、それは株価だけのこと。復活したのは、「金融成金」であって、「土地成金」ではないということだろう。

なお、この間に国富が増えた最大の要因は、生産設備や在庫などで構成される生産資産の大幅増だ。

1989年から2022年の間に914兆円から2260兆円と2.5倍になった。同じ時期の経済規模(名目GDP<国内総生産>)が2.5倍になったかといえば、もちろんそうではない。つまり、生産資産1単位当たりから創出される経済付加価値は減っているわけで、この付加価値生産性の低さが日本経済の抱える病巣にほかならない。

では、次にその名目GDPについて見ていこう。

名目GDPでわかる日本の低成長ぶり

2023年の名目GDPはインフレの影響もあり、前年比5.7%の591兆円となった(インフレ影響を除いた実質GDPの伸びは同1.9%増)。1989年の410兆円に対して、約1.4倍だ。

一応増えてはいるが、1989年から2022年の名目GDPの伸びでは、世界経済全体は約5倍、先進国でも例えばアメリカは約4.5倍になっている(いずれも世界銀行の推計)。日本の低成長ぶりは火を見るよりも明らかだ。

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