LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし、路面の白線マーカーに沿い走行

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現在は、数十年来の懸案であったシンガポール―ジョホール間の越境都市鉄道(RTS)の開業に合わせる形での運行開始を目指しているが、実際の開業時期は不明である。

BRTはRTSのジョホール(マレーシア)側の起点から3方向に約50kmがフェーズ1整備区間として示されているが、先の関係者は、2023年末頃にプロジェクトの呼称がBRTからLRTに突如変わったという。RTSはもともとシンガポールのMRT(地下鉄)規格で建設予定だったが、2019年にマレーシア側の政治的理由で急遽LRT規格に変更された。そして、規定路線のごとく車両はCRRC株洲が受注した。

もし、ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ。

予算のない都市にARTは「朗報」となるか

プトラジャヤでは既存鉄道駅からのフィーダー交通としてモノレール計画が存在していたが、コスト面から頓挫しており、ARTはそれに代わるシステムとして導入調査が進む模様である。それにしても、ARTがいかに「規格」を売り込むビジネスであるかがわかる。

ART 充電施設
ARTの充電用施設。これも中国製だ(写真:Ernest Wong)

おりしも2024年1月から5年間の任期で、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル氏が第17代マレーシア国王として即位した。同氏は高速鉄道推進派としても知られ、シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない。

LRTを導入したくとも予算のない地域、バス輸送に任せるには心もとない、抵抗があるといった地域にとっては、朗報とも言える存在になるかもしれない。まずは、マレーシアでどのようなオペレーションが始まるか、続報を待ちたい。

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高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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