LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし、路面の白線マーカーに沿い走行

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路線バスと普通鉄道の間に位置づけられる輸送システムは、主にBRT、またLRTとして世界の国々で確立している。世界のBRTは、日本のそれと異なり、一般車線から完全に分離されていることがほとんどだ。バス停は道路中央に「駅」として存在し、車内での料金支払いがないため、連接バスで一度に多くの乗客を運べて時間のロスがない。

トランスジャカルタ
ジャカルタのBRT(トランスジャカルタ)の駅とバス。完全に分離された専用走行路を走る(筆者撮影)

ただ、あくまで一般車線とセパレーターで区切られた専用レーンを走るだけで、運行システム上は限りなく一般のバスに近い。よって整備費用が安価なため、先進国、途上国問わず多くの都市で導入、また導入計画がある。しかし、これより鉄道システムに近いガイドウェイ方式(走行路の側面にあるガイドに沿って走行する)は、専用軌道を最高時速100kmで走るOバーン(オーストラリア・アデレード)が知られているものの、採用例はあまり多くない。日本でも、名古屋のゆとりーとラインで採用されただけである。

ゆとりーとライン
名古屋のガイドウェイバス「ゆとりーとライン」。専用の走行路を側面のガイドウェイに沿って走る(写真:hap/PIXTA)

ゴムタイヤ式LRT、試行錯誤の歴史

ARTはLRTをバスに近づけた存在と呼べそうだが、ゴムタイヤで走るLRT自体は以前から存在し、1990年代から2000年代初めにかけてボンバルディアが「GLT(Guided Light Transit)」、フランスのロールが「トランスロール」として開発、実用化している。前者は運転台にハンドルを設置しているが、どちらのシステムも走行路の中央に設置した1本のガイドレールに従って走る仕組みである。

天津トランスロール
中国・天津に導入されたトランスロール。中央に1本あるガイドレールに沿って走行する。2023年に廃止された(写真:西船junctionどっと混む)

低コストで整備できるLRTを目指したこれらのシステムだが、採用例は少なく、特殊仕様の域を出ることはないままで、スペアパーツの供給などメンテナンスコストが高騰した。また、ゴムタイヤ走行による轍が道路上に発生するなどして、乗り心地が悪化した。

結局目立ったコスト削減効果は表れず、ほとんどが通常の鉄車輪式のLRTやトロリーバスなどに置き換えられ、GLTはすでに全廃された。両システムを開発したボンバルディア、ロールはともにアルストムに買収され、トランスロールの技術は同社に引き継がれている。

ARTを開発した中国でも、2007年に天津、2010年に上海でトランスロールのゴムタイヤ式LRTを導入したが、いずれも上記の理由で2023年に廃止された。

上海トランスロール
上海に導入されたトランスロールのゴムタイヤ式LRT。2023年に廃止された(写真:西船junctionどっと混む)

CRRCグループ各社は、ボンバルディア、アルストム、シーメンスなどヨーロッパの大手車両メーカーと技術提携しており、これらのゴムタイヤ式LRT導入も、技術を自国に取り込む意図があったのではと思われる。

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