国内海運大手3社が紅海での船舶の運航を停止 海運の世界的な要衝である紅海で情勢が緊迫化

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イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海で船舶への攻撃を繰り返す中、国内海運大手3社が紅海での全ての船舶の運航を停止したことが分かった。

日本郵船、商船三井、川崎汽船のそれぞれの広報担当者が明らかにした。郵船は米英軍によるフーシ派への軍事拠点に対する空爆のあった12日から紅海での全ての船舶の航行を中断しており、再開は状況を注視しながら判断するとしている。特に紅海付近の船舶については安全な海域での待機やアフリカ南端の喜望峰経由を含めたルート変更を検討している。

川崎汽船も12日から紅海での航行を止めており、今後は喜望峰経由で迂回するかを検討していく。商船三井は紅海やイエメン沖のアデン湾の入域を当面見送っているという。

情勢緊迫化でコンテナ船の運賃が上昇

海運の世界的な要衝である紅海では情勢が緊迫化しつつある。米英軍は今年に入り、紅海で船舶への攻撃を2カ月にわたり続けてきたフーシ派の軍事拠点に空爆を行ったが、その後もフーシ派の攻撃は続いており、米国が再び空爆を実施する事態となっている。情勢緊迫化を受けコンテナ船運賃が上昇する一方、物流混乱の影響でテスラ、ボルボ・カー、スズキの欧州工場が一時的に生産停止に追い込まれるなど影響が広がっている。

運賃上昇による業績押し上げ効果が期待される3社の株価は17日そろって上昇した。郵船の株価は一時前日比3.9%高の5236円と、ブルームバーグの記録に残る1974年9月11日以降の日中最高値を付けた。商船三井は同5.3%高、川崎汽船は同5.7%高となった。

上海航運交易所が発表する上海輸出コンテナ運賃指数(SCFI)は12日、前の週末比16%高の2206.03と2022年9月以来の高値を付けた。

野村証券の廣兼賢治アナリストは、アジア欧州航路の運航距離の増加で需給のひっ迫が予想され、スポット運賃が切り上がったと分析した。空爆後も紅海の運航再開めどは立っておらず、引き続き運賃に上昇圧力が加わる状況が続くとの見方を示した。

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著者:稲島剛史、小田翔子

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