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与えられた権限の範囲内で独断専行で情報を得る 佐藤優の情報術、91年クーデター事件簿㊶

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筆者は1988年5月からモスクワの日本大使館政務班で勤務するようになった。ゴルバチョフ氏がソ連共産党書記長になってから、ソ連外務省プレスセンターで週2回行われる記者会見に大使館員もオブザーバーとして参加できるようになった。質問をすることはできないが、会見の冒頭発言と質疑応答を傍聴することはできる。大使館にとっても貴重な情報源だった。

さらに3階には、ソ連外務省に登録した記者だけが使える特別のバーとレストランがあった。市内では外貨ショップでしか購入できない高級ウォッカやコニャック(モルドバの30年物があった)、キャビアなどを国定価格で買うことができる。30年物のコニャックにキャビアの載ったオープンサンドイッチを取っても300円くらいだった。筆者は外交官なので本来このバーやレストランを使うことはできないが、支配人にSONYのラジカセを「友情の印」として贈ったら、自由に使えるようになった。

89年春から、グラスノスチ(公開制)の徹底ということで、月曜から金曜まで週5回、ソ連外務省の記者会見が開かれるようになった。大使館では、ルーチンを組んで記者会見をフォローするようになったが、先輩らは1カ月くらいで「大した情報もないし、重要な事柄はタス通信で配信されるから」と言って、記者会見に行かなくなった。

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