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今回は、一橋大学経済研究所の森口千晶教授がゴールディン氏の3つの論文を取り上げ、「夫婦別姓」「働き方」「男女平等への道」という重要テーマを語る。森口氏は1998〜2001年の間、ハーバード大学に勤務し、同じ経済史家としてゴールディン氏と親交を深めた。この第1回目のテーマは「夫婦別姓」だ。
――ノーベル経済学賞受賞者が発表された10月、クラウディア・ゴールディン氏の業績解説記事の結びに、「彼女の研究成果は、アメリカ社会の固有の歴史的条件を反映するところも多く、単純に日本に当てはめることはできない。だが、働き方改革や男女間格差の解消が急務である今、周回遅れの日本に対して豊かな示唆を与えるものである」と書かれています。
前回はうまく逃げ切ったと思ったのですが、その後、いろんな人から「豊かな示唆」って何やねん、と聞かれてしまって(笑)。今回は覚悟を決めて、日本への示唆について語ります。そのために改めてゴールディン氏の色々な論文を読み直したのですが、やはり彼女の論文は面白いです。美しい英語で明確に書かれていて、説得力が半端ない。
今日は、特に日本への示唆に満ちた3本の論文を取り上げます。まず、アメリカにおける「夫婦別姓」を分析した論文から始めましょう。(Claudia Goldin and Maria Shim(2004)“Making a Name: Women’s Surnames at Marriage and Beyond”)
アメリカでもかつては「夫婦同姓」
――アメリカでは夫婦は姓を選べるのですか。
はい、アメリカには戸籍制度がないので姓は自由に選べます。ただし、1950年代までは、Mr. and Mrs. Smith(スミス夫妻)といった呼称が示すように、強い「夫婦同姓」の社会規範がありました。
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