急増するMBO、日本株市場に吹く新たな追い風 2023年のMBO総額は過去最大の規模に
MBOが増加する背景には、物言う株主とも言われるアクティビスト投資家からの圧力がある。議決権確保のコンサルティング業務などを行うアイ・アールジャパンホールディングスの資料によると、アクティビストからの株主提案数は9月30日時点で22年から19%増え、過去最大に上る。直近では、英ファンドのパリサー・キャピタルが京成電鉄に対して保有するオリエンタルランド株を削減する提案を発表した。
次のMBO銘柄は化学や小売セクターから出てくるとの見方がある。企業支配権やプロキシーアドバイザーを手掛けるクエストハブの大熊将八代表取締役CEOは、創業家が最大30%株式を保有していたり、不動産が多いなど余剰資産があったりという企業が候補になりやすいと言う。
TOPIX構成銘柄のうち約半数がPBR1倍割れ
一方で、少数株主の権利が懸念として浮上する。大正製薬Hの事例では、マネックスグループ傘下のカタリスト投資顧問は、株価純資産倍率(PBR)が1倍を割れるMBO価格は「少数株主を軽視した判断」との意見を発表した。CLSA証券のストラテジスト、ニコラス・スミス氏はリポートで、日本では買収に当たり取締役会は株主のために可能な限り高値を付けることを必ずしも強制されないと指摘した。
東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄のうち約半数がPBR1倍割れで取引されている。多くの企業が割安に放置されていることから、ストラテジックキャピタルの丸木強代表取締役は、増加するMBOは「正常化の過程かもしれない」との見解を示す。「市場原理が働くようになると、安ければ買われる」と述べた。
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--取材協力:我妻綾.
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著者:田村康剛
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