東大発、教員が無料で隙間時間に学び直せる「LEARN Teachers Academy」始動 オンデマンド動画を軸に議論や実践の場も用意

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もちろん教員研修は行われているが、そこにも課題はあるという。法令研修はやるべきことがたくさんあり、新しい学びを取り入れる予算も時間もないと中邑氏は指摘する。

「私たちが『無料でいいから研修をやらせてほしい』と学校や自治体に声をかけても、『予定がいっぱいで組み込めない』と言われてしまうのが現状で、今の教員養成や研修を変えて新しいことを始めるのは難しいと感じています。だったら、学校の外でやろうと。すでに私たちが学校外で展開しているLEARNのコンテンツやベースとなる考え方を、先生たちが学べる場をつくればいい。そう思ってLTAを立ち上げたのです」

「今の教員養成や教員研修にはない内容」が学べる

LTAの受講者は、まずは基礎コースから学ぶ。人数制限は設けないので、誰でも受講することができる。20〜30時間のオンラインカリキュラムは「領域A:変化する現代社会と教育課題を広い視点から学ぶ」「領域B:科学的思考と子どもの能力の見立てを学ぶ」「領域C:子どもの力を引き出すテクノロジーと環境を学ぶ」という3領域で構成されている。

「今の教員養成や教員研修には含まれていない、重要なもの」(中邑氏)を学ぶ内容となっている。例えば、AI時代の子育て、子どもの貧困と社会の分断、ICTの活用に必要なアクセシビリティーの情報、AAC(補助代替コミュニケーション)や認知科学の基礎、インクルーシブ教育の現状と未来など、幅広いテーマが予定されている。

中邑氏をはじめ、教育哲学者の苫野一徳氏、こども食堂の支援をしている湯浅誠氏、文部科学省初等中等教育局視学委員でGIGAスクール戦略担当を務めるEdlog代表取締役社長の中川哲氏など、多様な講師陣を揃えている。

「今の学校のあり方や学習指導要領を否定するわけではありません。しかしこれまで、『時間割なし・教科書なし・目的なし・協働や計画も緩やかに』を基本とする、いわば学校とは正反対の学びを実践するLEARNでは、子どもたちが明らかに生き生きと変わっていきました。子どもたちが動き出すのを待つ教育なので、今すぐ学校の枠組みで実装するのは難しいですが、東京都渋谷区や広島県、福島県は、LEARNへの参加について出席配慮をしてくれるようになりました。こうした動きがある中、3割の先生の意識が変われば、学校の学びはもっと自由になっていくと考えています。気の長い話ではありますが、学校の中から少しずつ日本の教育を変えていこうというのが、私たちの目論見なのです」

子どもたちが変わっていくというLEARNは、いったいどのような学びを提供しているのか。例えば、今年は「ものづくりの好きな高校生集まれ 60年代の空冷ポルシェを甦らせよ!―人や機械からものづくりの知恵を学ぶ5日間―」「昆虫学者と森を歩き、生き物とコミュニケーションする!」「働くってなに?〜とりあえず働いて、その面白さを体験してみよう〜」「子どものためのプログラム『動物県からの贈り物』、保護者のためのプログラム『子育て作戦会議』」など、多彩なプログラムを全国各地で実施してきた。

LEARNは、子どもや保護者を対象にさまざまなプログラムを提供している

こうしたLEARNの運営を支えているのは、教育に関心の高い個人や企業などの寄付による東京大学基金の中のLEARN基金だ。そのため、LEARNプログラムの参加費は、交通費や宿泊費を除いて原則無料となっており、LTAもこの基金で賄われる。

「LTAが目指すのは、LEARNが追求してきた個別最適な学びを前提とするインクルーシブ教育の実現です。近年、裕福な家庭の子は早くから私立に進学し、均質な集団の中で教育を受けているという背景もあり、多様性のある公教育をもっと大事にしなければいけないと思っています。それを担っている学校の先生には自信を持ってもらいたい。子どもたちの支援に当たって医師の診断を必須とする学校が多いですが、1人ひとりの様子を一番近くで見ているのは保護者と先生です。例え医師のサポートが必要な状態でも、環境を調整することで困り事が解消するケースもあります。それぞれの子どもに合った学びの提案を先生が自信を持ってできるようにしたいと考えています」

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