野党陣営の切り札と見られていた野党候補一本化は成立せず、台湾総統選は三つどもえの争いとなる構図が固まった。(台湾政治研究者・小笠原欣幸氏の連載第9回、前回記事はこちら)
11月24日までの立候補登録期間を経て、2024年1月13日に行われる台湾総統選挙の構図が確定した。与党・民進党の頼清徳候補に国民党の侯友宜候補、民衆党の柯文哲候補の野党2氏が挑む。野党は候補の一本化による巻き返しを狙い、土壇場で前代未聞の動きを連発させたが、結局物別れに終わった。この間の「劇的」な動きを振り返りながら、残り1カ月半となった選挙戦の行方を展望したい。
前代未聞の展開となった野党一本化交渉
今年に入って本格化していった選挙戦は与党候補に対し、複数の野党候補が乱立する状態で展開してきた。この構図は与党に有利なので、野党陣営は早い段階から水面下で候補一本化交渉を断続的に続けてきた。しかし、どちらが総統候補、副総統候補になるかという「正副」問題をめぐって折り合いがつかなかった。
基本的にどうしても一本化したいのは国民党側だった。民衆党は単独で選挙戦に挑む腹積もりで国民党が何を提供してくれるのかを見るスタンスだった。民衆党からすれば、国民党の侯氏が「副」に回る一本化であれば喜んで受け入れるが、柯氏が「副」に回る一本化は最初から応じるつもりはなかった。一方の国民党は一本化によって勝利の可能性を高めたいが、総統候補を出さないという選択は受け入れがたい。
というのも、国民党は15人の県市長、38名の立法委員(国会議員)を擁するのに対して、民衆党は県市長わずか2名、立法委員は5名の小政党にすぎない。この政党の力が違うというのが国民党の言い分であった。民衆党は世論調査で支持率が高いのは柯氏で、侯氏を立てても勝てないとまで主張した。
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