「家族団欒」を知らない子のために、民泊修学旅行の実態と受け入れ家庭の本音 不登校の生徒にも影響、職業観や勤労観を養う
「受け入れ家庭の方々もイキイキしてくるように感じます。生徒さんや先生と話したり、受け入れ家庭同士で仲良くなったり、『次はこんなことをしてみよう』と家庭内で前向きな会話も増えたようです。民泊を通して自信がつき、再び働き出す人もいます」
中には、「怖い人がいたらどうしよう」「迷惑がられているのではないか」と心配する生徒もいるそうだが、内薗氏は「いやいや受け入れている人はいない」と笑う。
「1年以上前から準備をしていますから、私たちは『やっと来てくれたね!』という気持ちです。この思いがちゃんと伝わるよう、入村式で笑顔を見せて不安を和らげようとしています(笑)。また、先立ってオンラインで生徒さんと受け入れ家庭とをつなぐ試みもありました。事前にお互いの顔を見て話せると、安心できるようです」
コロナ禍ではこんなエピソードもある。
「ほとんどの学校が来訪をキャンセルする中、どうしても来たいという学校もいくつかありました。しかし、受け入れ家庭には高齢の方も多いですし、垂水は小さな町ですから、もし誰かが感染すればすぐにわかってしまいます。断る方向で各家庭にアンケートを取ったのですが、『断るのは可哀想』『生徒さんのためにやりたい』という回答が半数弱ほど寄せられました。そこで、受け入れ可能な家庭のみで、専門家を招き徹底的に感染対策を施したうえで修学旅行を実施しました」
学校側も対策を講じていることもあり、これまで感染拡大は起こっていないという。一方で、課題もある。前出の竹内氏は「受け入れ家庭の多くは高齢の方なので、今後は高齢化と後継者不足が問題になるでしょう」と語る。実際に垂水市でも、受け入れ家庭の主力は60代後半から70代。今後は若い世代の受け入れ家庭を増やすことが各地の課題となるだろう。
初対面の人の家に泊まり、家族のように暮らす。コミュニケーションを通して子どもたちが学び、地域や大人たちに影響を及ぼす。観光名所を回る受け身の修学旅行とは異なる、新しいスタイルは、まだまだ進化と拡大を続けそうだ。
(文:吉田渓 編集部 田堂友香子、注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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