1カ月で8割が読書好きに、AI選書サービス創業者が語る「読書離れ」解決の道 ヨンデミー代表・笹沼颯太「読める=学ぶ力」
「この20年でブックスタートの活動を始める自治体が増えて読み聞かせは普及したので、本を読む土壌は整っているんですよね。ただ、その先の『自分で読む』を支える仕組みがないから私たちがつくったわけです。事業を通じて、適切なサポートがあれば子どもは変わるんだなと感じています」
では、子どもを読書好きにするには、保護者や教員はどのような働きかけをするとよいのか。
「私たちは、楽しく、たくさん、幅広く、本が読めるようになることを重視しています。楽しくないのにたくさん本を読ませようとすれば、読書が嫌いになります。たくさん読んでいないのに難しい本を読もうとすれば、挫折します。そのため私たちの選書提案も、楽しく読めて、読書習慣ができた段階で新たなタイプの本を薦めます。まずは『楽しく』から始めることが大事です」
とくに保護者には、本を読まない時間を大切にしてほしいという。
「本をよく読む大人は、読んだ後に誰かに話そうとしますよね。それは子どもも同じで、本について話したり考えたりする時間を設けると読書がより楽しくなります。ぜひお子さんが本を読んだ後は親子でその本について会話をしてあげてください。一方、学校では、例えば同じものを読んだ後、ほかの人はどのような展開を考えたのか、どこに注目したのかを共有し合うなど、読書の楽しさである『知る・感じる・考える』過程を可視化してあげることが大切だと思います」
また、動画やゲームよりも読書を優先する子どもにするには、自分は読書が得意だと思わせることもポイントだ。
「とくに今の子どもたちは偏差値で比べられる教育の中で認められることが極端に少ないので、本を1冊読んだだけでも褒めてあげてほしい。声がけとしては、『読書家だね』と言ってあげることがお勧めです」
笹沼氏は、習い事として読書のカテゴリーを確立したいと語る。また、書店と連携したり、学校でワークショップを行ったり、子どもが本と触れ合う機会を増やす取り組みも展開したいという。
「母語の言語能力がないと英語力は身に付きませんし、AIにうまく指示を出して活用することもできません。ますますテキストベースの理解が重視される時代になっているので、子どもが読書習慣を身に付けることは大切です。また、読めて書ければ仕事ができます。今後は『書く』ことも支えるサービスへ進化させていこうと考えています」

Yondemy代表取締役
東京大学経済学部在学中の2020年にYondemyを設立、AIのヨンデミー先生によるサポートとアプリで読書を楽しむことができるオンライン読書教育サービス「ヨンデミーオンライン」の提供を開始。AIが一人ひとりの好みとレベルに合わせてお薦めしてくれる本は、全国の図書館の在庫情報とリンクしており、近くの図書館ですぐに借りることができる。23年2月からはLINEで保護者の悩みに回答する無料サービス「教えて!ヨンデミー」もスタート
(文:國貞文隆、注記のない写真:梅谷秀司撮影)
東洋経済education × ICT編集部
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