子どもの幸福感は所得・学歴より「自己決定」が大切、ウェルビーイング教育のカギ 自ら考え行動する自律型学習者を育てる意味

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注目を集める理由はいくつかありますが、私がいちばん感心したのは、Happiness Creator(幸せをつくる人)を育てることを、子ども園から短期大学まで有する学園全体の最上位のテーマに置いて、すべての教育活動を行っているところです。

今、私立学校は、自主性を尊重しつつ公共性と質の向上を担保するためにも、建学の精神をはじめ目指す教育について向き合うことが求められています。そこで新渡戸文化学園が導き出したのが、前述のHappiness Creatorの育成という言葉でした。

奥津憲人(おくつ・けんと)
新渡戸文化中学校・高等学校 ブランディングデザインチーフ

奥津先生は、新渡戸稲造が残した「自分が生まれてからこの世を去るまでに、周りの人々が少しでもよくなれば、それで生まれてきた甲斐があるというものである」という言葉を紹介しつつ、新渡戸文化学園のスクールミッションは、「地域・社会と共に持続可能な未来を描く拠点として、個人と社会のウェルビーイングを創造する」ことだと説明しました。

具体的には、コアラーニング(教科基礎学習の時間)、クロスカリキュラム(教科を超えたプロジェクト)、チャレンジベースドラーニング(リアルな社会課題への挑戦)の3Cカリキュラムを回しながら、自ら学びをデザインする自律型学習者を育てていきます。

コアラーニングでは、1人1台のiPadとAIを活用したデジタル教材を使った個別最適な学びを実現することで余白を取りつつ、毎週水曜日には全日を通したクロスカリキュラムの授業を行います。クロスカリキュラムの時間には、複数教科の教員によって展開される教科の枠を超えた授業で、複眼的思考で課題を読み解く力をつけていきます。

実体験を通して自ら問いを立て、余白の時間でじっくり考える

社会課題を解決するために、大人がテーマを設定してそれを解決する方法を子どもに提案させるSDGsの教育に疑問を投げかける山藤先生。新渡戸文化学園では、コアラーニングで培った力を生かして、生徒自らが課題を発見し、そこに向き合いながら答えを探していくプロセスを重視しています。

ユニークなのは、修学旅行をそれぞれの興味・関心に応じて行き先や内容を選べるスタディツアーにしているところ。

山藤旅聞(さんとう・りょぶん)
新渡戸文化中学校・高等学校 副校長

「体験に勝る学びはなし」を実現するために年に1〜2回、高1・高2では最大年4回、日本全国のさまざまな場所に出かけていきます。そこで見て体験して感じたことから生まれた問いをクロスカリキュラムの中で深化させ、再び現地を訪れ、最終的に実際の課題解決プロジェクトとして現地に提案することもあります。

そうした話から、この日に紹介されたのは、「地方都市の廃校を使った新しい防災訓練プロジェクト」です。

スタディツアーで、早朝から大変な思いをして定置網漁に参加し、それが驚くべき値段で売られていく現実を目の当たりにし、売ることができなかった食材で自炊をすることで食に対する意識も変わっていきます。また現地で超高齢化が進む地方都市の課題にも気づいた生徒たちが、東京に戻ってからクロスカリキュラムの時間に何ができるかをひたすら問い直し、1年半かけて生まれたのが、いつ起きても不思議ではない震災から身を守るための防災教育を、全国で増え続ける廃校を活用して行うというアイデアでした。

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