今のところ、国家非常事態委員会がホワイトハウス(ロシア大統領府・最高会議・政府建物)に対して強硬措置をとる気配はない。ホワイトハウスに籠城しているエリツィン大統領側の戦略がよく見えない。1991年9月20日の午前11時に、ホワイトハウス内で取材している「ラトビア青年」紙のイーゴリ・ラズモフスキー記者から興味深い情報が入ってきたので、公電で東京の外務本省に報告した。
ソ連非常事態宣言(内話)
第5319号 秘
1.20日11:00、ロシア大統領府・最高会議・政府建物内で取材中のラズモフスキー「ラトヴィア青年」紙記者が佐藤に対し、ロシア当局の動向につき電話連絡越したところ次の通り。聞き込みのままなるも取り敢えず。
エリツィン側についた兵士の数は約500名で、自動小銃等で武装し、建物を警備している。兵士の他、約2千名の若者が建物の警備を行っている。10時より、「民主ロシア」、「ロシア」等、各会派の会合が行われている。ロシア当局は、ロシア通信、バルト諸国独立派系等「エ」支持派プレスの記者に特別許可証を発行し取材を進めている。
20日朝、エリツィン大統領のツァレガロッツエフ大統領補佐官は「火炎瓶を持った分子はクーデター当局が挑発のために送り込んでいる」と言っていたが、実態とは異なるようだ。エリツィン側も武装兵士や火炎瓶で武装した若者を集めているとみるのが妥当だ。国家非常事態委員会がホワイトハウスへの強行突破を試みたら流血の惨事になる。
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