1991年8月21日午前には、国家非常事態委員会によるクーデターは失敗したという見方が主流になっていた。テレビやタス通信の内容も国家非常事態委員会の統制から外れ、エリツィン・ロシア大統領側からのニュースを流すようになった。夕刻からはテレビのアナウンサーが入れ替わり、エリツィン派の情報ばかりを流すようになった。
クーデター失敗か、情報が錯綜
この日、筆者は昼前から日本人記者何人かと会って情報交換をした。誰もがこの先、ソ連がどうなるかについて見通しを持てなくなっていた。クリュチコフKGB(国家保安委員会)議長が逮捕されたとか、ヤゾフ国防相が自殺したというような噂が流れた。情報が錯綜しているので、信頼できると思われるもののみを選んで、東京の外務本省に公電で報告した。
平成3年8月22日本省着
ソ連非常事態宣言(国家非常事態委員会メンバーのたいほ:未確認情報)
第5427号 秘 大至急
21日17:27、ロシア通信は未確認情報として国家非常事態委員会の7名が逮捕され、ヤゾフ国防相が自殺した旨報じているところ、関連情報次の通り
(1)21日17:04のタスは、マニロフ・ソ連国防省報道局長は「ヤ」の辞任説を否定し、「ヤ」は議会の信任を受けている旨述べた。
(2)21日17:40、川端がロシア最高会議国際問題委員会に国家非常委員会メンバーの消息につき質したところ、先方(官職氏名不詳)は何等情報を有していない旨述べた。
(3)21日18:10、記者会見の席上、記者の質問に答え、ザソーホフ政治局員は国家非常委員会メンバーの消息については何等の情報も有していない旨述べた。
(4)21日18:35、佐藤がロシア大統領府書記局に国家非常委員会メンバーの消息につき質したところ、先方(官職氏名不詳)は何等情報を有していない旨述べた。
(5)21日18:42、佐藤がレオーノフ・ロシア共産党第二書記補佐官に1.情報(筆者注*この公電冒頭に記した情報)の真偽につき質したところ、「レ」は右情報が流布されていることについては承知しているが、事実関係については確認出来ない旨述べた。(了)
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