大成建設、「世田谷区役所」工事が2年遅延の波紋 株価も急落、建築工事で「負の連鎖」が発生か?

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世田谷区役所の工事遅延の背景として、気になるのは大成建設の社内体制が乱れているのではないかということだ。準大手ゼネコンの首脳は、「(特有の事情で)負の連鎖を招いているのではないか」と指摘する。

現在、大成建設は北海道札幌市の高層複合ビルの工事で不具合を起こしたことで、15階まで組み上げた鉄筋を解体して建て直す、前代未聞の「やり直し工事」に粛々と取り組んでいる。もちろん想定外の対応のため、当初計画以上に職人などの人手をとられることになる。

建設業界はもともと人手不足な深刻な状態だ。大成建設はそこに、札幌市での想定外の追加工事が発生した。「世田谷区役所の工事では工程を見誤った分を“人海戦術”で巻き返すつもりだったのが、職人などを十分に投入できないために大幅遅延に至ったのだろう」(準大手ゼネコンのベテラン社員)と見る関係者は少なくない。

ほかの工事に連鎖する危険性も高い

「建築工事は怖い。ひとつふたつ大きな問題を起こすと、それがほかの工事に波及する」。前出の準大手ゼネコンの首脳はこうささやく。

土木工事はダムやトンネルなど大がかりなものが多いが、工事にかかわる専門業者の領域は比較的少ない。対して、オフィスビルやマンションといった建築工事は、左官工事、電気工事、管工事、塗装工事など、多岐にわたる専門業者が連携している。「関わる専門業者の種類が、建築と土木では数十倍違う」(業界関係者)ともいわれる。

そのため、建築工事はひとつの案件で歯車が狂うと、設計図書や実施工程表、施工計画書などを書き換えるだけでなく、多岐にわたる職人も手配し直さなければならないため、ほかの工事に連鎖する危険性も高いというわけだ。

大成建設については、縦割り組織の弊害を指摘する声もある。

ゼネコン業界はもともと、昔ながらの古い体質で上下関係が厳しい会社が多い。その中でも、大成建設は特に上下関係に厳しく、その社風は「軍隊」と例えられることもある。「上がこける(上司が異動になる)と、下もこける(部下も異動させられる)」(準大手ゼネコンの幹部)。

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