世界が注目する給食や掃除、日本の学校教育「強みと弱み」に見るこれから 国立教育政策研究所・大野彰子氏が語る課題
2023年6月に閣議決定された「教育振興基本計画(2023〜2027)」におけるキーワードは「ウェルビーイング」(身体的・精神的・社会的によい状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含む概念)です。「ウェルビーイング」は、OECDで以前から提唱されてきた考え方ですが、日本の教育振興基本計画に今回初めて書き込まれました。
子どものウェルビーイングは、OECDによると「物質的な状況」「身体的な健康状況」「認知的・教育状況」「社会・情緒的な発達の状況」の指標が使用されていますが、そのうち日本では子どもの「主観的幸福度」(生活満足度)がとても低くなっています。
「教育振興基本計画(2023〜2027)」には、日本社会に根差した調和と協調に基づくウェルビーイングを教育を通じて向上させていくことや、子どもたちのウェルビーイングを高めるためには教師をはじめとする学校全体のウェルビーイングが重要であり、子どもたち一人ひとりのウェルビーイングが家庭や地域に広がっていくことが大切であることが述べられています。
――子どもたちの主観的幸福度を上げていくためにはどうしたらよいのでしょうか。
すでに、学校・先生方が工夫しながら実践しているケースも多いですが、「一斉授業による教育」から「子どもたち一人ひとりの可能性を引き出す教育」へのシフトチェンジをさらに進める必要があるのではないでしょうか。
近年、不登校が増加傾向にあります。学校は、教科の学びや特別活動などを通して他者と協働しながら生きた体験やいろいろな発見ができる場ですが、学校に行きづらい子に対しては、アバターやメタバースなどのICTを活用して家庭以外の居場所をつくる取り組みは現代的な解決策の1つだと思いますし、オルタナティブスクールなど他国の政策から学ぶ必要もあるかもしれません。
これからは、教育現場においてもAIの活用が前提となっていくでしょう。つい先ごろ、文科省は学校での生成AIの利用に関する暫定的なガイドラインを公表しました。ChatGPTなど生成AIを含めた近年のデジタル技術の急速な発達が教育に与える影響を認識しながら、教員は子どもたちの学びのファシリテーターとしてデジタルの活用を含めすべての子どもたちの可能性を引き出す教育とは何かを考え実践していくことが、子どもたちのウェルビーイングの向上につながっていくのではないでしょうか。
(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
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