世界が注目する給食や掃除、日本の学校教育「強みと弱み」に見るこれから 国立教育政策研究所・大野彰子氏が語る課題

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また、「TALIS2018」によると、日本の小中学校教員の1週間当たりの仕事時間の長さはOECD加盟国を含めた48カ国中最長で、中学校の課外活動(部活動)の指導時間がとくに長いという結果になっています。一方、日本の小中学校教員が職能開発活動に使った時間は、参加国中で最短です。

なお、教員不足は23年5月に開催されたG7富山・金沢教育大臣会合では日本のみならず各国共通の話題となりました。処遇を含む働きやすい労働条件の整備、部活動の地域移行など教員の負担軽減のための実効性のある制度改革が急務といえます。

さらに、教員の自己効力感については、「児童生徒が学習の価値を見出せるよう手助けする」などの項目に対し、「できている」と肯定的に回答した教員の割合は中学校で約34%と、参加国平均(中学校約83%)と比べて非常に低い結果となっています。日本人は謙虚な気質でこのような主観的なアンケートに対して低めに回答する傾向がありますが、そのバイアスを加味しても、低すぎるように感じます。日本の先生方は、子どもたちの学力、生きる力を確実につけ、国際的な調査でも結果を出しているのですから、もっと自信を持ってほしいと思います。

――先生方の自己効力感が低いのはどうしてなのでしょうか。

これは私の主観的意見ですが、現場の先生たちが、その存在を認められ、褒められるような機会が少ないのではないかと感じています。自らも学びながら子どもたちの成長に直接関わる教員の仕事は、とてもすばらしいものです。抽象的な表現になりますが、保護者、地域、そして社会全体で、「教員はすばらしい仕事で、価値ある仕事である」ということをさらに認め、教員という職業の社会的価値を取り戻すことが、自己効力感の向上につながるのではないでしょうか。

日本の教育は大きな転換期、過渡期を迎えている

――2020年度から新しい学習指導要領が始まり、GIGAスクール構想スタートから3年目を迎える現在、日本の教育の現在地についてどのように捉えていらっしゃいますか?

「生きる力」は学習指導要領ではずっとうたわれてきていますが、20年度からの新しい学習指導要領改定において、探究活動などの重視により「生きる力」をどのように育んでいくのか、知識だけではなく思考力・判断力・表現力などを子どもたちが身に付け「持続可能な社会の創り手」となるようどのように育んでいくのか。これらの実現に向け、先生方が努力されている最中であり、まさに今、大きな転換期を迎えているといえると思います。

また、20年度からGIGAスクール構想による取り組みが進み、多くの学校の授業でICTが活用されるようになりましたが、ICT端末を文房具として使いこなす学校もあればそうでない学校もあり、現状では学校間格差があるのも事実です。将来的には探究的な学びにもICTが自然と使われていくのが理想ですが、「PISA2022」のICT活用調査結果などを参考にしながらより具体的な議論を推し進めていく必要があるでしょう。

――コンピューターを使用して試験を実施するCBT(Computer Based Testing)の導入も少しずつ進んでいます。

北欧では、15年の時点で普段の授業のテストにCBTが使われていました。日本でも近年、英検やTOEICなどで用いられるようになり、21年12月から希望する全国の小・中・高等学校などでの導入をスタートした「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)」の活用も進んでいます。全国学力・学習状況調査も25年からCBTを順次導入することが決まっています。こうしたICT端末を活用した学校教育も、今まさに「過渡期」を迎えているといえるでしょう。

日本社会に根差したウェルビーイングを目指して

――日本のこれからの教育に必要なことは、どんなことでしょうか。

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