小野寺五典氏「日本のサイバー空間だけ無法地帯」 今後の防衛・安全保障はチーム抑止力が中心に
小野寺:ほかの国は日本のサイバー空間の中でも自由にやってきています。サイバー空間は、どこまでが領土で、どこまでの攻撃が武力攻撃か、基準も非常にあいまいです。
日本では今、サイバー空間でパトロールはできない。サイバー空間でおかしな動きがあっても、日本では監視できない。日本のサイバー空間だけが無法地帯になっていて、これは問題です。当然、犯罪はダメ、民間の人がいたずら目的や犯罪目的でやるのもダメだけど、日本としても、取り締まる人がサイバー空間の中をパトロールできるようにする必要があるのではないか。そういう方向の法改正は必要では、と私は思っています。
それは今回の3文書にも書き、与党で合意して、大枠は了承しました。後は細目をどうするかで、継続して議論することになっています。おそらく今年の秋以降、具体的な制度設計について話し合うことになると思います。
サイバー空間での反撃は「交戦権」に当たるか
塩田:憲法は交戦権を禁じていますが、どこかの国からサイバー攻撃を受けた場合、反撃能力を行使するのは、憲法上、禁止された交戦権に当たるのかどうか。この点は。
小野寺:非常に難しい議論です。今までは相手の領土を壊滅的に攻撃することは憲法上、できないと言っていましたけど、サイバー空間上、領土はない。こちらから相手に対してサーバーをダウンするようなことを行ったら、武力攻撃に当たるのか。これもよくわからない。日本の中で、誰もこの議論を詰め切っていないんです。そこから詰めていくことが大事かなと思います。
世界はどうかというと、NATO(北大西洋条約機構)なんかは、自国の判断でやっています。エストニアのタリンにNATOの研究所があり、私も防衛大臣のときに行きましたが、そこでNATOの基準を作っています。
アメリカの例を聞いても、サイバー上での情報収集に関して、自国民に対してはしないけど、外国の人に関しては自由に行うという一つの考え方があると思います。ファイブ・アイズ(オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカの英語圏の5カ国による機密情報共有の同盟といわれる枠組み)のほかの4カ国は対象に入っていないようですけど、当然、日本も韓国も情報収集の対象になっているわけです。そういうルールはそれぞれの国が独自に作って、厳密化はしていると思います。
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