小野寺五典氏「日本のサイバー空間だけ無法地帯」 今後の防衛・安全保障はチーム抑止力が中心に
小野寺:それから、日本は今回初めて、アメリカではなく、イギリス、イタリアと対等な関係で戦闘機の開発をすることになります。今まで新しい次期戦闘機を造るときはアメリカと組んでいました。でも、アメリカは強い国なので、日本が技術を出して、取られることはあっても、向こうは技術を日本に開示してくれないから、アメリカ製の戦闘機に日本製のミサイルを付けようと思っても、付け方を開示してくれないので、アメリカ製ミサイルを買うしかなかった。
3カ国で開発することになれば、当然、ブラックボックスも含めて、中身はすべて日本でわかりますので、日本型のものを付けることができます。できた戦闘機も、3カ国でそれぞれ調達します。しかし、ほかに欲しい国が出てきた場合、日本から輸出はできません。
アジアの国から頼まれたとき、日本は売ることができないので、イギリスかイタリアに頼んでください、と言うしかない。ですが、アジアのその国には、イギリスとイタリア経由で日本が造った戦闘機が行くわけです。これはおかしい。このように、日本としても第三国移転について一定のルールを今のうちに作っておかないと、戦闘機が完成したときに困ることになる。それも議論の一つになると思います。
防衛費2%はチームとして必要
塩田:防衛力強化に伴う防衛予算の増額の問題ですが、長く維持してきた防衛費の対GDP(国内総生産)比1%を超えて、1.5%とか2%という話が出ています。
小野寺:現在の安全保障環境の中で、日本の周辺で紛争を起こさせないためには、日本だけでなく、チームとしての抑止力が必要です。日米同盟も日米韓も、安倍元総理が提唱して今、強固な関係になりつつある「QUAD(クアッド=日米豪印4カ国戦略対話)」もあります。NATOもチームとして一緒に、とお願いしています。チームが強くなり、大きくなることの利益は、もしかしたら日本が一番受けるかもしれない。
チームは、結束だけではなく、それぞれの国に目標を課しています。それがGDP比2%の防衛費なんです。それぞれのチームが懸命にやっている努力を、日本がやらなければ口先だけの国と思われるのでは、と心配しています。実際にNATOの基準で対GDP比の防衛費を見ると、1%ちょっとくらいで、日本は自前の努力をしないと、チームの一員としては認めてもらえないかもしれない。だから、努力しようということです。
自衛隊の予算をいきなり2倍にすることではない。研究開発費とか、国民が避難するために必要なシェルターとか、港湾や空港の整備とか、広い意味で安全保障に資する予算をこの数字にカウントしようと思っています。全体の抗堪性を上げていくことが大事です。
塩田:対GDP比で2%という数字がなぜ世界標準に。特別の根拠があるのですか。
小野寺:これはNATOの国がそれぞれ決めたことだと思うんですが、NATOの議論の詳細はわかりません。アメリカは確か3%以上、NATOでも主要な国は、ドイツを除いて2%を超えています。おそらく、このくらいの努力を、という数字だと思います。
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