学級会とどう違う?深見太一「クラス会議」で学級経営がうまくいく理由 心理的安全性の高いクラスづくりのポイント
クラス会議を重ねることで、子どもたちは「自分の意見を言うことは気持ちいい」と感じ、「自分たちのクラスをつくっているのは自分である」というオーナーシップが芽生えます。クラス会議講師として半年間関わらせてもらっている沖縄県宮古島の平良第一小学校では、5年間学校を挙げてクラス会議を取り入れているのですが、児童会の役員選挙にたくさんの子どもたちが立候補していました。「自分たちの学校をよくしていきたい」という気持ちの表れですよね。現在若者の投票率が低いことが課題となっていますが、このような経験の積み重ねが、成人してからの主体的な投票行動につながると信じています。
――クラス会議で、子どもの個人的な悩みが解決することもあるのでしょうか。

4年生の担任だったとき、ある女の子(Aさん)が夏休み明けから休みがちになってしまいました。明るく元気で友達関係に問題を抱えている様子も感じられなかったのですが、本人に理由を尋ねると、「給食のときに気持ちが悪くなるので学校に来るのが嫌」とのこと。すると、その子と仲良しの女の子がクラス会議の議題として「どうしたらAさんが給食を嫌がらず学校に来られるようになるのか」を提案しました。その日にみんなで話した議事録をAさんに渡したら、2回目のクラス会議にAさんが参加し、みんなの前で自分の気持ちを話してくれました。
そのときに出た複数の解決策の中から、Aさんは「お弁当を持ってくるのがよいと思いました」と発表してその日は終わったのですが、驚いたことに、Aさんは次の日から毎日登校し、給食もみんなと一緒に食べられるようになったのです。
「給食を食べなきゃいけない」「食べないとみんなから責められる」という思い込みが、みんなの「大丈夫だよ」「私も給食苦手だよ」という声を聞いて気持ちが楽になったのでしょう。その後Aさんはすっかり元気を取り戻し、保護者の方もびっくりしていました。今でも忘れられないエピソードです。
先生という“鎧(よろい)”を脱ぎ、子どもたちを信じて任せる
――クラス会議講師として全国各地で講座を開催されていらっしゃいますが、先生方の反応はいかがですか?
学校に足を運ぶ際は、まずは先生同士でグループに分かれてクラス会議を体験してもらうのですが、先生方は日々忙しく、職場で自分について語り合うような場が非常に少ないんですよね。クラス会議を体験してもらうことが、先生自身の悩みや不安をみんなで共有できる場づくりにつながっていることを実感しています。
先生が、自身の心にちょっと引っかかっていることを抱えながら仕事を続けるのは、しんどいと思うのです。“とげ”が心に刺さったまま忙しさに流されてしだいに増えていき、とげの多さに気づいたときにはもう手遅れで、ある日突然パタッと辞めてしまう。そうならないよう、心のとげをちょっとずつ抜いていくような場は、先生たちにも必要だと痛感しています。そのせいか、講座終了後は、皆さん一様に明るい表情になっている印象です。

――忙しい先生がクラス会議を定着させていくために必要なのは、どんなことでしょう。
「クラス会議をする時間がないです」という声をよく聞きますが、「個別に注意したり、叱ったりする時間を転用すればクラス会議の時間に充てることができますよ」と伝えています。