スポーツ体験格差が深刻化、「サッカーのため借り入れ」など支援申請は2年で3倍 「習い事は贅沢品だ」で貧困世帯が孤立の危険性

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「申請者へのアンケートでは、82%の世帯が『サッカーへの支援は食料や教育などへの支援と同じくらい必要』と回答しました。実際、28%の世帯の子どもたちが家計に配慮して自ら『サッカーは辞める』と話していますが、それまでの居場所を失う苦しみは非常に大きいものです。しかし現状、学校や地域社会が校外の体験活動に手を差し伸べることは難しく、親にも甘えられないとなると、子どもは問題を自分で抱え込むしかありません。『自分には頼れる場所がない』という孤独感・無力感にさいなまれ、自分の存在価値そのものに疑問を抱いてしまうケースも考えられます」

体験格差による孤立を防ぐため、「子どもサッカー新学期応援事業」ではサッカー選手と子どもたちが交流する機会を設けている。2022年12月に東京で実施した交流会では、27人の子どもたちとその保護者、12人のプロ選手がミニゲームなどを楽しんだ。

交流会の様子。参加した選手名とチーム名(23年6月現在)は、富樫敬真選手(サガン鳥栖)、田邉草民選手(アビスパ福岡)、森谷賢太郎選手(サガン鳥栖)、小林悠選手(川崎フロンターレ)、家長昭博選手(川崎フロンターレ)、齋藤学選手、新井直人選手(アルビレックス新潟)、 茂木力也選手(大宮アルディージャ)、吉見夏稀選手(KSPO)、 朴一圭選手(サガン鳥栖)、下澤悠太選手(テゲバジャーロ宮崎)、尾田緩奈選手(アニージャ湘南)
(写真:加藤氏提供)

「子どもたちが心のどこかで選手やlove.fútbolとつながっている状態をつくることが、彼らの成長の支えになると考えています。参加したある子どもは、選手をニックネームで呼び、『友達になれてよかった』と話していたそうです。引っ越し先のチームでうまくやっていけるかどうか不安を抱えていた子どもに、選手が自分の移籍体験を話してあげていたこともありました。こうした交流が、その後のその子の支えとなっています」

ほかにも、中学生の男子から「これまでサッカーを続けさせてくれたお母さんに恩返しをしたい。活動で応援してくれた人たちに『あの時はありがとうございました。こんなカッコいい選手になりました』と胸を張って言える人になりたい。そしていつか、僕と同じ境遇の子どもたちを支える人になりたい」という感想が寄せられたという。

「選手と交流した子どもたちの中には、同じようなことを話す子どもたちが多くいます。『応援される体験が、誰かを応援したいという気持ちにつながるんだ』と、私たち自身が学ばさせてもらいました」

部活動の地域移行で費用負担が増える可能性も

2022年12月にスポーツ庁と文化庁が策定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」では、公立中学校を主な対象に、23~25年度を部活動の地域移行などの改革推進期間とする指針が示された。これにより部活動の活動主体が学校から地域クラブなどさまざまな団体へ変わることが想定され、新たに指導料や施設使用料などが発生する可能性もある。部活動の費用負担が増えれば、貧困世帯の子どもは退部せざるをえないケースも想定される。

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