コロナ禍の間の「鎖国」を経て、中国人の世界観はわれわれとは懸け離れてしまった。
ほぼ一方通行だが、日中間の往来が復活しつつある。ビジネスで日本に渡航する中国人が急増しているのだ。だが、交流の再開は必ずしも関係改善を意味しない。
国際会議「アジアの未来」での対談で、私は中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長の発言に凍り付いた。「サンフランシスコ体制はつくり替えるべきだ。中国は同条約を認めていない。東アジアのさまざまな問題はこれに起因する」。
日本の主権回復やその範囲、そして日米同盟などを決定したサンフランシスコ体制は、好き嫌いはともかく第2次世界大戦後の東アジア秩序の礎だ。「それではまるで、中国が現在の国際秩序を打破しようとしているように聞こえますよ」と私は畳み込んだ。しかし彼は構わず、その中には中国の居場所がない、変えるべきだ、と大勢の聴衆の前で強調し続けた。
70年以上も存在し、人々の生活の基礎になってきたものを、中国の都合に合わないから再構築せよとはあまりに乱暴な話だ。中国は、実際には1971年の国連加盟や翌年の日中国交正常化でそれを受け入れている。今日、中国は「国連中心の秩序を推し進める」と公言するが、サンフランシスコ講和条約は日本と国連(連合国)の間で調印されたものだ。
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